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紅梅
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紅梅        わが家にて       2006.2.24 
 これは、紅い花のウメを大写しにしたものですが、ふだんはウメを見かけても、樹木であるためにこのように間近に見ることはできないのでこの写真にあるような多くの雄しべを見つめることもない人が大多数と思います。 ウメは、サクラやモモなどの広く親しまれている花などとともにバラ科で、それらに共通の多数の雄しべがありますが、それらを見ているとこの一つ一つが丹精込めて創造されていると感じます。芸術家が何らかの作品を作るとき、その一つ一つに情熱と愛を注いで造り出すと思われますが、まさにこのウメの花の創造主がそのような愛を込めているのが感じられます。
 万葉集には、ウメをうたった歌が118首もあり、サクラは44首で、大きな差があります。また、花鳥図ではウメが最も多く取り上げられていると言われています。また、古今、新古今などの歌集にも梅を歌ったものは多く見られます。 このように、古い時代に中国から伝わった樹木ですが、古代から日本人に特別に愛されてきた樹木の花だといえます。
 
梅が枝に 鳴きてうつろふ鶯の はね白妙に淡雪ぞ降る  (読み人しらず「新古今和歌集 春歌上より」)
(梅の枝をさえずりながら飛び移るウグイスの羽を白く見せるほどに早春の溶けやすい雪が降りかかっている)
 
 この歌では、梅、ウグイス、雪、という三つのものが溶け合って私たちに早春の自然がやってくるようです。
 このように多くの日本人の心を引きつけてきたのは、やはり寒さ厳しいただなかに次々と咲き続けるその姿、純白のウメにはとくに、世の中の汚れに染まない清い花として多くの人の心に訴えてきたものと思われますし、上の写真のような紅梅にはまた白梅と異なる温かみを持っています。
 さらに、ウメには、ほのかな香りがあり、それは心に伝わる音楽のようなもので、目によく、心にもよいものと言えます。そしてウメの実がまた、薬用にもなり、日々の食事をも助けるものにもなるため、人々の生活にも深く関わっていると言えます。このように、芸術的にもまた精神的にも、さらに庶民の生活のなかにも溶け込んできたのがウメであったのです。
(文・写真とも T.YOSHIMURA)