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ウツギ                 徳島県海部郡日和佐町                          2005.5.20

ウツギ

 これは、5月の花としてとりわけ有名な花です。しかし、名前はよく知られていても、平地や都会では自然のままの姿では見ることがなく、このような花の有り様を直接に見る機会もなくなっています。
 漢字では「空木」と書きます。それはこの木の内部が中空だからです。
また、別名を卯の花というのは、太陰暦の4月を卯月といい、その頃に咲くからです。

 この花は、その純白の花びらと、半開きに咲くその控えめなたたずまいが心を心ひくものとなっています。
 この花は、つぎの広く歌われてきた唱歌(*)に含まれました。
作詩は、短歌の作者としてはとくに有名な佐佐木信綱により、曲も明るく初夏の感じがよく出されているために、1896年に「新編教育唱歌集」に出されて以来、100年以上も愛唱されてきたものです。
戦後は、この1節と、5節だけが採用されて親しまれています。そこには、いずれもこの卯の花が歌われています。

 なお、この1節に「卯の花が匂う」とあるので、たいていの人たちは、卯の花には香りがあると思っていますが、そうではなく、香りはありません。 なお、この「匂う」とは、本来は、「に」は丹で赤色、「ほ」は穂・秀の意で外に現れること、すなわち赤などの色にくっきり色づくのが原義で、「赤などのあざやかな色が美しく映える」とか「生き生きとした美しさなどが溢れる」といった意味にも使われています。(古語辞典、広辞苑などを参照)
 讃美歌にも、「ああ、ベツレヘムよ、などか一人  星のみ匂いて 静かに眠る…」(讃美歌115番)という言葉がありますが、これは星が「匂いをもっている」ということでなく、「星だけが美しく輝いている」という意味です。

1)卯の花の匂う垣根に ホトトギス
早も来鳴きて、忍び音もらす 夏は来ぬ
 

5)五月やみ、ホタル飛び交い 水鶏(くいな)なき、
卯の花咲きて、早苗植えわたす  夏は来ぬ。

この歌にもありますが、たしかに卯の花が咲くころに、しばしば山々にはホトトギスの強いさえずりが聞こえてくるし、そしてホタルもみられるようになります。ウツギの純白も、ホトトギスの強く鋭い鳴き声も、さらに闇に輝くホタルの光も…こうしたさまざまの自然の姿は、神の国を求めようと心から願うものにとって、神の国からの清い白であり、またそこからの呼びかけのようでもあり、さらに闇のなかに輝く光があるとの証しをしていると感じるのです。
(文・写真ともに、T.YOSHIMURA

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