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ヤマユリ   2007.7.18         岩手県にて  

ヤマユリ

  ユリには美しいものが多くあります。そしてまた歴史的にみても、ユリは古い時代からとくにキリスト教絵画にもよく描かれてきましたし、現在も好んでさまざまのユリが用いられています。 園芸店には、カサブランカといった大きなユリもあります。この有名なユリはここに見るヤマユリやカノコユリなどからつくられたもので、いずれも日本がその原産地です。  ヤマユリは、近畿地方以北から東北地方にかけて野生が見られるとのことですが、私が学生時代によく歩いた近畿の山でも見たことがなかったもので、以前に高知の牧野植物園で植栽されたのは見ていたのですが、野生のヤマユリは今回初めて見ることができたものです。  今年、7月中旬に岩手から宮城に至る山沿いの道路を車で走っているとき、このヤマユリが時折咲いているのがみられてその豊かな美しさが心に残りました。このヤマユリは、花びらがユリの仲間では最も大きく、白い花びらの中央に薄い黄色のすじが入り、赤みががった斑点が模様のようについています。  世界で最も美しいユリとして、このヤマユリ、カノコユリ、そしてテッポウユリがあげられることがあります。カノコユリ(鹿の子百合)は、四国・九州の崖に稀に自生 するとされ、私はもう25年ほど前に、県南部の海岸の崖で自生しているのを見付けたことがあり、その美しいユリが海からの風を受けて咲いている光景を忘れることができません。

 テッポウユリは、現在では、キリスト教において最も重要な「復活」の象徴として、広く用いられています。テッポウユリが知られていないときには、ヨーロッパでは、白いユリであるマドンナリリーが用いられ、レオナルド・ダ・ヴィンチや、ボッティチェルリなどの受胎告知の絵には、天使の左手に白いユリを持った姿が描かれていますが、これがマドンナリリーです。しかし、近年では、このユリに代わって、テッポウユリが多く用いられるようになったといいます。
 
テッポウユリの原産地は、奄美、琉球列島であり、世界でとくに美しいとされる三つのユリが、この広い世界において、すべて日本が原産地であることは、とても意外なことです。
 
これらのユリのような気品のある美しさと、白いユリに象徴される清らかさと、死に打ち勝つ復活信仰が、日本においても、今後さらに広まっていくようにと願われます。(写真、文ともに T.YOSHIMURA

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