ナガバモミジイチゴ

ナガバモミジイチゴ

ナガバモミジイチゴ (長葉紅葉苺)

 徳島県小松島市日峰山   2005.4.5 

 春先にこのような、純白の美しい花を咲かせる木いちごの仲間は他にもいろいろありますが、このモミジイチゴの仲間はとくによく知られています。それは、花も美しく、初夏に黄色い実をつけ、それは木いちごのなかまでも美味だからでもあります。 名前については、東日本にはこれより葉が丸みがかったのがあり、それをモミジイチゴといい、ここであげたモミジイチゴは、西日本にみられ、葉が長いので、この名があります。このキイチゴは、花は多く咲いても、実は少ししかできないので、割合多く見られるキイチゴの仲間ですが、その実を山で実際に味わったことのある人はごく少ないようです。 私はもう四十年以上も昔に、山で初めてこの実を見付けたとき、まずその色合いが、やや赤味がかった黄色の美しいものであったので、こんなきれいな実が自然にあるのかと驚いたものです。そして食べてみたときの味わいもとてもよいものであったので、ずっと記憶に残っています。  中国や朝鮮半島ではキイチゴのある種類を薬用としても利用するとのことで、花は目と心にもよいし、実もよく、また薬用と、多方面に用いられているのが分かります。

 日本のキイチゴの仲間は、ほかに、カジイチゴ、クサイチゴ、フユイチゴ、バライチゴ、ナワシロイチゴなど、30種類以上あると言われています。
  
キイチゴの学名は、rubus palmatus (ルブス パルマートゥス)といいます。ルブスは「赤い」(*)、パルマートゥス は「手のひらの形をした」 という意味ですが、これは、 キイチゴの仲間は実が赤いのが多く、葉が手のひら状をしているからです。(ただし、このモミジイチゴは実は黄色です。)これは、ラテン語の ruber (ルベル 赤い)という言葉に由来します。
 *)なお、このラテン語から、ルビー(紅玉)という宝石の名前も派生しています。

 この写真は、わが家の近くの山間の谷間にひっそりと咲いていたもので、ほとんど誰も見るものもいないところで、このような美しい花を見出すと、天来の贈り物という気がします。 このような自然の清さに触れるとき、人間の持つ清らかさというのは、まるで色あせてくるように思われます。それは、当然のことで、この自然の白い花は、神ご自身の清さを直接的に映し出しているからです。 神の国とはどのようなところなのか、そうした一端をかいま見させてくれるものとなっています。(文・写真ともに、T.YOSHIMURA

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2005年4月