コマクサ (秋田駒ヶ岳 2016.7.22) 
野草と樹木たち    コマクサ(秋田駒ヶ岳 2016.7.22
 コマクサは、高山に咲く花として、とくによく知られています。
 これは、秋田駒ヶ岳の火山による砂礫(砂、小石)が広がるところに咲いていたものです。 高さは10㎝程度、花は淡紅色。ほかの植物が生育できないような場所に、緑の細かい切れ込みのある葉のなかから伸びた花茎に咲くこの花の色や形は、見る人がだれも、驚くような美しい植物です。
 とくに冬場は、風雪はげしく、気温も氷点下数十度にもなるような中部から東北、北海道にかけての高山や寒冷地ーシベリア東部、千島、カムチャッカに分布する、しかもこのような砂礫ばかりのような地ーどこからみても可憐な美しい花が生育しうるとは思えないので、とくに印象的な花です。
 人間が園芸用として作った植物は、虫害から守るために消毒をし、また水や肥料をやり、日当たりも必要、温度管理や剪定等々も必要です。しかしこのコマクサは、そのような世話などいっさい不要で、それどころか、上の写真にあるような荒涼としたこの荒れ地に、しかも何年もかかって花を咲かせるという忍耐強さを持っている植物です。   そのことを思いめぐらしているとき、聖書とその神の言葉を信じる神の民のことが浮んできました。雨がごく少ない砂漠や荒れ地の広がる地域のただなかに種まかれ、周囲の大国の侵略に脅かされ、滅ぼされていく状況にありながら、そこで世界の人々に深い影響を及ぼしていく真理の花を咲かせていったのが聖書だといえます。   現代の私たちにおいては、古代にはなかったような、異なるかたちで荒涼とした精神世界が広がっていますが、そのただなかにあって、神の御手がはたらくときには、私たちのうちに命の水が注がれ、葉が茂り、花を咲かせ、実りを与えられることを思います。       (文、写真ともT.YOSHIMURA
前へ 次へ