リストボタン休憩室 1999/11

木星、土星、すばる

 前回に紹介した木星が今ごろは、夕方からずっと夜通し見ることができるので、何人かの人からも空に木星を見るようになって、身近になったとか、夜に空を見上げるようになったとか、聞かされています。

 現在(十一月下旬頃)、夜の九時頃に空を仰ぐと、南のやや高い空に、明るく木星が輝いています。そしてその少し東寄りには、木星よりは弱いがかなりの明るさで土星が見えます。木星は、ほかのどの星よりもはっきりとした強い明るさで輝いているので、だれでもすぐに見つかります。

 木星から、土星までの間隔をやや長めに土星の方向に延長していくと、ぼんやりと白いものが見えます。目のよいに人は、六個ほどの星が白い雲のようななかに見えます。これが、昔から有名な「すばる」です。プレヤデス星団のことです。

 これは、日本でも、今から千年ほども昔の清少納言がその随筆である枕草子につぎのように書いていることは広く知られています。

 星はすばる。牽牛(ひこぼし)、夕づつ(宵の明星のことで、金星)。 

 清少納言はどうして冬のオリオン座とかその中に含まれる青く輝くリゲルとか、あるいはシリウスのような強く輝いて目立つ星をあげずに、すばるを第一にあげているのか、不思議に思われますが、これは独特の白くくもったようななかに六つほどの星が見えるその姿がことに心を引いたものと思われます。(なお、ひこぼしとは、わし座の一等星アルタイルのこと)

 日本だけでなく、中国やインド、ヨーロッパなど世界的にこのすばるは古くから知られている星団なので、見たことのない人は、木星と土星をたどって見つけるとよいと思います。

 聖書のなかにも、つぎのように現れます。

あなたは、プレヤデスの鎖を結び、オリオンの綱を解くことができるか。・・大熊座とその星々を導くことができるか。あなたは天の法則を知っているか、その支配を地に及ぼすことができるか。
(ヨブ記三十八・3133

 これは、ヨブという非常な苦難に突然にして陥った人が神はよい人も悪い人もみんな同じに扱うのだ、神は正しくないなどと苦しみのあまり神への不信を叫んでいたとき、神が最後に答えられたその言葉のなかにあります。ヨブ記を書いた信仰の大詩人もまた、夜空のすばるやオリオンなどに特別な関心を持ち、そこに神の大いなるわざを感じとっていたのがうかがえるのです。

 また、明け方には、素晴らしく輝く明けの明星(金星)が東の空に見えています。この時間の前後には、東から西の空に至るまで、たくさんの明るい星が輝いており、これほど多くの明るい星が一度に見られるのは珍しいことです。金星以外に、南の空にはオリオン座のリゲル、ベテルギウスなどの明るい星、大犬座のシリウス、こいぬ座のプロキオン、双子座のポルックスとカストル、ぎょしゃ座のカペラ、雄牛座のアルデバラン、そして西の方に低くなっていますが、土星、木星といった明るい星が見えるのです。

 空の星に親しむと、私たちの心をいつもより高い方へ、また清い世界へと引き寄せられる思いがします。


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