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休憩室・ウメ、自然と人工、星 2000-2

ウメ
 冬にはウメとスイセンがとりわけ印象的です。いずれも北風の吹くただ中にあって、美しい花を咲かせ、しかもいずれも心をひく香りをあたりに漂わせています。
 ウメについては、わが家には白梅と紅梅があり、今年はことに多くの美しい花を咲かせています。
 かつて旧約聖書の預言者エレミアはウメとほとんどよく似た冬に咲く花(アーモンドの花)を見るように神に導かれ、そこに神の言葉を聞き取ったことが思い出されます。他の植物はほとんど枯れたようになっているのに、一人目覚めて白い花を咲かせているあり様こそ、神の言を託されたエレミアの前途を暗示するものであったのです。
 現代の私たちにもウメの清楚な姿はそれを通して何かを語りかけているようです。

自然と人工
 太陽はどんな仕組みであんなに膨大なエネルギーを放出しているのか、だれでも一度や二度は疑問に思ったことがあると思います。いくら大規模な山火事になっても、大火があっても少し離れたら熱くもなんともないのに、恐ろしく遠い太陽にあたると暖かく、日陰では寒く感じます。 それは想像もつかない仕組みであのような大量のエネルギーを出しているのだろうと思われるはずです。
 それは、核融合といって水素の原子核が核融合をしてヘリウムになるときに莫大な熱エネルギーを放出するのです。
 これは地上でもこの核融合を起こすことができるようになりました。それは、一九五四年にアメリカで完成された水素爆弾です。これは広島での原爆の一千倍もの破壊力を持っているものまで作られました。
 広島原爆でも一瞬にして八万名が即死し、その後五年間の死者を併せると、その原爆のために二十万人もが犠牲となるほどに想像を絶する被害を与えるものでした。水爆はその広島原爆の一千倍の威力をも持つというのですから、これほど恐ろしい大量殺人兵器はありません。
 原子力科学という最も時代の先端をいく科学技術の生みだしたものが、このようなおそるべき兵器であること、それは人間が物を作るという営みがいかに根本的な欠陥を伴うかを思い知らされます。
 しかし、このようなおそるべき破壊力をもった核融合という現象によって、じつは人類、否すべての地球上の生物は生きているのです。それが太陽です。人間が作ると途方もない殺戮兵器となるのに、神はそれをはるか彼方に創造して地球での生活に不可欠なものとされているのです。
 また、地球がどうしていつまでも熱いのか、時折噴火する火山などで私たちは不思議に思います。このことについていろいろと昔か考えられてきましたが、これもようやく百年ほどまえになって判明してきたのです。
 この熱源の重要な一つに、地球内部の岩石のうちに含まれるウランやカリウム、トリウムなどの放射性元素が放射線を出しながら別の元素に変わっていくときに放出する熱があります。
 例えば、カコウ岩なら、数千万年で自身を完全に溶かすのに十分な熱量を生じるということです。
 このような一部の元素が壊れるときに放射線を出すという現象は、地上でも現在では原子力発電所の内部で放射性廃棄物として大量に生じています。これは何よりも取扱いの難しいものとなって、原子力発電の最大の難問の一つでもあります。例えば、プルトニウムはその放射能が半分になるまでに二万四千百年もかかるのであり、これは人間の生活する時間から言えば、事実上永久的と言ってよいほどに放射線を出し続けるのです。
 自然界ではこのように太陽にしても地球にしても、莫大なエネルギーや危険な放射線を出す現象が驚くべきことですが、たくみに地球上のあらゆる生物を活かすことにつながり、そのエネルギー源ともなっているのです。

冬は星が一年中で最も美しく、かつ清く見える時です。冬には戸外で花火とか飲み食いで遊ぶ人も少なく、静かな戸外で凍るような冬の夜空を見ると、自然のなかでは最も私たちを高みに引き上げてくれるものです。
 この星の世界の深みについて哲学者カントの有名な言葉が思い出されます。それは、彼の三つの代表的な著作の一つ「実践理性批判」の結論に書かれている言葉です。
「くりかえし、じっと反省すればするほど常に新たにそして高まりくる感嘆と崇敬の念をもって心を満たすものが二つある。それはわが上なる星の輝く空と、わが内なる道徳律である。」
 星の輝く大空を見つめるとき、そこに無限に広がる宇宙を創造した見えざるお方へのおそれを呼び覚まされます。
 そして私たちの精神の奥深くに、真実なもの、正しいものを直感的に感じとり、そうした真なるものへ近づきたいという深い要求があり、「なすべき」世界があることを感じるものです。この二つによって、私たちの外なる世界と内なる世界の双方に無限なる世界があることを知らされ、神の御手をそこに感じさせるものがあります。
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