リストボタン休憩室   2002/7

沈黙のなかで
 七月から八月は平地や低山では最も野草や樹木などの花は少ない季節です。山は緑一色で、ふつうの山道にもほとんど花を咲かせる野草は見あたりません。しかしそうした季節は、その緑の葉の内で、たくさんの日光の光を受けて、デンプンが造られています。そのデンプンによって、つぎの世代のための実をつくり、幹を伸ばし、太らせて成長していくための材料も造られているのです。その沈黙のなかにも、葉の内部を見るならば、光による複雑な化学合成や分解などの化学反応が日夜活発に行われているわけです。そしてそれらの葉も秋になると多くは枯れて地上に落ち、今度は無数のバクテリアの食物となっていき、葉に含まれていたミネラルはふたたび植物の肥料ともなっていきます。
 自然は片時も休むことなく、何も変化のないようなときでも、つねに働いているのがわかります。こうした働きの背後につねに今も働き、創造を続けておられる神がおられます。主イエスも「わたしの父は今に至るまで働いておられる。わたしも働くのである」と言われています。(ヨハネ福音書五・17)私たちの心の内に、そのような主イエスが住んでくださるとき、私たちもたえず、神の国のために働く者と変えられていきます。それは病床にある人も共通です。ベッドで周りの人のために、祈ることも、神の国のための霊的な働きだからです。

夏には花などは少なくなるけれども、そのかわりに日本ではセミがたくさん鳴き始めます。ヨーロッパの国々では雨量も少なく、昆虫類は日本よりはるかに少なく、セミもあまり見られないところが多く、日本に来てセミのコーラスを耳にすると何という鳥が鳴いているのかと不思議がるといいます。
 樹木の沈黙あり、セミのコーラスあり、緑の海あり、また涼しげな渓谷の流れの音あり、夏の山道もまた、神のはたらきを知らされる場となっています。

夏の夜空を眺める機会は多くあります。夏は夜の涼しさを求めて野外に出ることが多いからです。そして夏の夜空といえば、天の川と、それにまつわる織女星(しょくじょせい・こと座の一等星ベガ)、牽牛星(けんぎゅうせい・わし座の一等星アルタイル)が知られています。
 しかし、最近ではその天の川を見たことがないという人が多数を占めるようになっています。都会に住む「はこ舟」のある読者が、天の川を見たいと書いておられました。夏の星座を知っている人なら、さきほどあげたこと座のベガや白鳥座のデネブという一等星や鷲座のアルタイルという星を見つけて、さらに南の空に見えるさそり座の一等星であるアンタレスをつなぐあたりに、白く見えるのですぐに見付かります。
 都会でなければ、これらの一等星はすぐに見付かりますからそれらの背後にある天の川もわかります。この天の川を見ていて思うのは、つまらないたなばた伝説などでなく、大空の広大さです。光の速さはよく知られているように、一秒間に三〇万キロ、一年では、九兆四六〇〇億キロメートルも進みます。しかし、天の川として見ることができる私たちの銀河系宇宙は、その直径がその速い光でも十万年もかかるほどの距離です。
そして最も銀河系に近いとなりのよく似た星雲であるアンドロメダ星雲は、地球から光が二百三十万年もかかって到達できるほどの距離なのです。そしてこのような星雲が宇宙には数知れずあるというのですから、その広大さは私たちの想像をはるかに越えています。天の川を見つめていると、そのような宇宙の広大無辺の一端に触れているのを感じて、神の創造の無限の大きさに驚嘆します。そしてそのような大いなる神が、宇宙の広大さに比べるとゼロに等しいような小さな一人一人の悩みや苦しみをもわかって導いて下さるということに、さらに驚かされるのです。


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