リストボタン植物の効果  2002/11

 植物は、さまざまの面で人間によきものを与えています。生きるために不可欠な酸素は植物が作っているし、毎日の食事の主食である米や小麦などの主食、それから副食も植物に由来しています。ここでは、いくつかの書物やインタネット、食品分析表などを参考にして、そうしたものを参照できにくい人のために書いてみました。
 今多くの人の関心が集まっているガンに対しても、植物、とくに緑黄野菜や大豆、玄米などが注目されています。
 緑黄野菜は発がん促進物質の効力を低め、がんの発生を防ぐ作用のあることが動物実験などから明らかになっています。
 緑黄色野菜に多く含まれるベータ・カロチン(体内でビタミンAに変わる)やレバーなどに含まれるビタミンA、緑茶や緑黄色野菜に含まれる植物成分のポリフェノールなどは、発がん促進物質の効力を低め、がんの発生を防ぐ作用のあることが動物実験などから明らかになっています。
また、カロチンやビタミンAを含む食品をたくさん食べることで、肺がん、膀胱がん、喉頭がん、胃がんなどにかかりにくくなることが知られています。
 ビタミンCというとみかん類を思い浮かべますが、柿、パセリやピーマン、いちごなどにも多く含まれています。日本では昔からもっともなじみのある果物といえる、柿は栄養的にもすぐれた食品です。甘柿についていうと、ビタミンAもビタミンCも、ミカン(温州みかん)にくらべると、いずれも二倍ほど含まれていますが、(*)たいていの人は、柿よりミカンがビタミンCを多く含むと思いこんでいるのではないかと思います。柿は、薬用植物でもあり、秋の果実も見て美しく、里の風景を豊かにし、心を和らげる働きもあります。

(*)みかんには、ビタミンAは、33IU、甘柿には、65IU、ビタミンCは、みかんは35ミリグラムに対して、柿は70ミリグラム含まれており、それぞれほぼ二倍となっています。(可食部100グラムあたり)

 食品に含まれる物質同士が体内で反応しあって、発がん物質がつくられる場合があるのですが、ビタミンCにはこの反応を抑えるはたらきがあります。胚芽米や大豆、いわしや卵などに多く含まれるビタミンEにも同じような作用が認められています。
 また、食物の繊維質は、大腸のはたらきを活発にして、便通をよくします。便が腸の中にある時間が短くなり、さらに、繊維成分が腸内にある発がん物質の濃度を薄めるので、大腸がんにかかりにくいといわれています。
 葉酸とビタミン12を与えて実験すると、それらを毎日与えると八割が、前ガン病変が消え始めたが、それらを与えなかった場合には、大半が改善しなかったといいます。
 また、葉酸はビタミンの一種で、緑黄野菜に多く含まれています。ビタミン12は、イワシ、アサリなどの魚介類に多い。これらは傷ついた遺伝子を修復する作用があるのではないかと言われています。予防としては、緑黄野菜を摂るのが基本だということです。
 また、トマトにあるカロチノイドの一種、タマネギやニンニクに含まれる物質も大腸ガンや肺ガンなどにも抑制効果があったということです。
 また、最近では、緑黄野菜のほかに淡色野菜が免疫機能を強める成分を含むことが明らかになってきました。免疫のはたらきに重要な関わりを持っている白血球の一種であるマクロファージによって作られるある物質は腫瘍を攻撃することがわかりました。そのマクロファージを活性化させる物質が、キャベツ、ナス、ダイコンなどの淡色野菜やバナナ、梨などに多く見られたということです。
 また、大豆製品がよいというのは特に最近は多く言われるようになっています。国立がんセンターでの調査では、みそ汁を毎日飲む人ほど胃ガンが少ないと報告されています。みそ汁に含まれている塩分のことが気になる人がいますが、みそ汁と同じ量の塩分を入れたものを与えるた群と比べると、みそ汁を与えたほうが胃ガンの発生率が少なかったとのことです。こうした結果から、みそ汁は胃ガンの発生を抑えることがわかっています。また、それに野菜や豆腐などを入れるとさらに効果的となるわけです。また、牛乳を一日に三六〇CC 以上飲む人は、胃ガンになるリスクが、五分の一〜四分の一になるという研究結果も出ています。
 私自身、三〇年ほども昔、夜間高校に勤務していたとき、激しい暴力が横行していて、夕食時間がほとんどなく、まともに食べられないことがしばしばあったうえ、理科関係の実験器具などを、食後すぐに準備したり後かたづけしたりしていて胃を悪くしました。食後数時間すると、胃が痛くなり、からだが重くなり、夜にはじっとしていられないほど痛むこともありました。そのようなとき、暖めた牛乳をよくかんで(唾液とまぜて)飲むこと、玄米を五〇回以上十分に噛んで食べること、植物性の食物にすることなどで薬を使わずに治っていった経験があります。それ以来、暖めた牛乳を愛用しています。
 また、岐阜大学の清水教授らの研究で、岐阜県高山市の三万人ほどの住民を対象として一〇年ちかく追跡調査した結果、豆腐、納豆、豆乳、味噌などの大豆製品を日常的に摂ると、胃ガンの死亡率が、半減するというデータが得られたと報告されています。それは大豆に含まれるイソフラボンという物質が細胞にできた腫瘍の増殖をおさえる働きがあるからです。
 ガンだけでなく、緑黄野菜や果物がよいということについては、最近アメリカで、ハーバード大学公衆衛生学教室の研究班の調査で、最大14年間にわたる大規模な疫学調査がなされました。調査対象者は、女性看護婦で7万5596人、男性は病院などに勤務する医療職に従事する男性3万8683人の計10万人を超える。その結果、つぎのような野菜の効果が明らかになりました。
・野菜は100gを1単位とすると、ブロッコリー、カリフラワーなどアブラナ科の野菜を毎日1単位以上食べている人は、ほとんど摂らない人より、脳梗塞の発症が29%減少していた。
・緑黄野菜を毎日1.5単位以上摂っている人は、ほとんど摂らない人より脳梗塞が24%少なかった 。
 このように、ガン以外の病気にも野菜の効果ははっきりと出ています。最近よくその著書が話題になる、聖路加病院の日野原重明さんも、夕食にはご飯は茶碗半分て、緑黄野菜をボール一杯を摂ると言っています。このように、野菜がよいというのは、言い換えると植物そのものがよいからです。主食でも、白米よりも自然のままの玄米がよいのは当然のことです。玄米とはイネの実そのままのものですから、主成分のデンプンのほかに、繊維分もビタミン類やミネラル、脂肪、タンパク質も多く含まれています。
 例えば、玄米は、白米に比べてご飯にした場合、繊維分は四倍、カルシウムは、二倍、鉄分は五倍、カリウムは四倍、ビタミンB1は五倍余り、B2は二倍、ナイアシンも五倍余り、ほかの栄養分についても、ビタミンE、ビタミン6、葉酸、リノール酸、パントテン酸等も白米よりも当然多く、白米と比べるとずっと栄養価値が高くなります。主食は毎日食べるものなので、この差は大きいと言えます。しかも玄米の食事はよく噛む必要がありますから、それも体によいわけです。
 サトウキビも自然のままのものを食べると、ビタミンやミネラルも含まれているけれども、それから白砂糖にしてしまうと、一種の化学薬品といったものになります。
 このように植物そのままのものはたいてい体によいのがわかります。からだの病気だけでなく、心の方面に対しても言えることです。私たちの心が憂鬱になり、沈みそうになるとき、植物の多いところ、つまり野山の自然に触れると心のなかのしこりが洗い流されるような気持ちになることがしばしばあります。植物、ことに樹木たちの沈黙とそのすがた、あるいは野草の花の清楚な美しさなどが心の栄養になり、よくないものを除く作用があるからです。
 最近は森林浴ということの重要性が知られるようになっています。
 森や林の中で清浄な空気を呼吸し、樹間を吹き抜ける風に当たりながら歩くことは、だれでも心身によい影響を感じるものです。森の樹木はさわやかな香気を放っていて、これはテルペン類という炭化水素化合物によるもので、人間の精神神経、とくに自律神経に作用して精神の安定によい効果をもたらすといわれています。
 植物は、酸素を作り出す以外にも、空気中の二酸化炭素をも吸収しています。それから、樹木や野草など、見ても心にさわやかさを与えてくれるし、果物もできる。暑さも和らげ、また山に降った雨をも貯めておくいわば自然のダムのような役割をも果たしています。
 食事においても、生活の場にあっても、植物との関わりを深めることで、人間はいろいろの意味で健康的になるのがわかります。区切り線音声ページトップへ戻る前へ戻るボタントップページへ戻るボタン次のページへ進むボタン。