はこ舟2004年9月 第524号

内容・もくじ
祝福を受け継ぐために
世界は主の慈しみで満ちている
平和の原点
ことば
休憩室
返舟だより


リストボタン祝福を受け継ぐために  2004/9

これだけ世の中に不合理なこと、暗いことが多いのに、愛の神が本当におられると信じることができるようになる、これは実に不思議なことである。
自分自身のことを考えても、キリスト教とか神とかには全く関心がなかったのであるが、前号に書いたようにある日突然にして私は神とキリストが私たちのために働いて下さっているということを知らされた。そしてそれを今から思っても不思議ないほどにすぐに受け入れることができた。
これは自分の意志でもなければ他人からの誘いもなく、ほかの人間や組織の意志でもない。人間を超えた神からの呼びかけだということをはっきりと感じたのである。
この世は、偶然と金や権力などの力、あるいは悪の力しかないように見える。しかし、その中にあって、生きて働く神がおられ、その神が私を呼んで下さったのであった。
聖書においても、私たちを呼び出される神のことがしばしば現れる。呼び出すという言葉に対して「召される」という訳語が多く使われている。しかし、これは現代の私たちにはどうも親しみにくい言葉である。ふだんの日常生活で、召されるなどという言葉を耳にすることはまずない。せいぜい、キリスト者が死んだときに○○さんは召された、ということを聞く程度である。
この「召す」という日本語は、古くからさまざまの意味に使われる言葉で、「御覧になるとか、治める、呼び寄せる、取り寄せる、食べる、飲む、服を着る、乗り物に乗る」などなど多方面に使われる。
それだけに、私たちが聖書を読むときに、原語の持っている明確な意味、「呼ぶ」という意味があいまいになってくる。
使徒パウロはその代表的な手紙においても、その冒頭に、「パウロ、キリスト・イエスの僕、福音のために選び出され、召されて使徒となった」(ローマ一・1)のように、神から呼び出された(召された)ということを記している。それはパウロの心にいつもあった原点であったからである。キリスト者とは神が呼んで下さったと実感した人たちであるということができる。
なぜ神は私たちを呼び出して下さったのだろうか。それは私たちが単に自分だけの安楽な生活をするためでない。

悪をもって悪に報いず、悪口をもって悪口に報いず、かえって、祝福をもって報いなさい。あなたがたが召されたのは、祝福を受け継ぐためなのである。
ペテロ三・9

私たちが召されたのは、不当な苦しみを受けたときでもキリストを思って甘んじて受けるため、また、祝福を受け継ぐためである。私たちは苦しみとか悪意とかに反発して憎しみを返すことなく、相手のために祝福を祈るために神から特に呼び出されたと言われている。
この祝福ははるか数千年も昔から、受け継がれてきた。祝福が受け継がれていくということが最初に出てくるのは、創世記のアブラハムの記事である。

主はアブラムに言われた。
「あなたは生まれ故郷、父の家を離れてわたしが示す地に行きなさい。
わたしはあなたを大いなる国民にし
あなたを祝福し、あなたの名を高める
祝福の源となるように。
あなたを祝福する人をわたしは祝福し
地上の氏族はすべて
あなたによって祝福に入る。」
(創世記十二・13より)

ここで繰り返し祝福という言葉が現れている。アブラハムは信仰の父と言われる。後のユダヤ教やキリスト教など、世界の極めて多くの人たちの信仰の模範となったからである。そのような信仰と祝福とが結びつけられているのである。
アブラハムは神の言葉に従って遠い神が指し示す地へと旅立った。そしてそのように従うという信仰の姿勢によってその後も一層の祝福を受けるようになった。
後にイサクをも神の言葉に従って捧げるという決断までしたことでその祝福の約束はさらに固くされた。

御使いは言った。
「わたしは自らにかけて誓う、と主は言われる。あなたがこの事を行い、自分の独り子である息子すら惜しまなかったので、あなたを豊かに祝福し、あなたの子孫を天の星のように、海辺の砂のように増やそう。
地上の諸国民はすべて、あなたの子孫によって祝福を得る。
あなたがわたしの声に聞き従ったからである。」
(創世記二二・1618より)

このように聖書に記されてから実際に、その後アブラハムの信仰の祝福は子孫までずっと及び、キリスト教にもその祝福は受け継がれ、全世界にと広がって行った。悪が広がるという観念が強いこの世にあって、驚くべきことに、聖書は神の祝福がいかなる時代の変化や迫害や困難にも関わらず、着々と伝えられて行ったのである。
ペテロが述べたように、聖書の神を信じるものは皆、こうした不滅の祝福を受け継ぎ、まず自らがその祝福を与えられ、ついで周りの人にその祝福を手渡し、さらに次の世代へと受け渡していくようにと、この世から呼び出されたのである。
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