リストボタン2004年10月 第525

内容・もくじ
力のみなもと
心の清いもの、その人は神を見る
二種類の喜び
キリスト者の願い
休憩室
ことば
返舟だより


リストボタン力のみなもと

私たちが日々の生活において、力は人間からは来ない。人間や人間がなしたことを見つめるとき、かえって力は失せる。
まず神を見つめるとき、自ずから力を与えられる。人の書いた物、意見なども知識を増やし助けられる。しかし内なる力は別のところにある。幼な子がまっすぐに母親を見つめるように、私たちもまっすぐに神を見つめるときに力が与えられる。青く澄んだ大空も夜空の星も、その澄み切った色や輝きは神に近い。神の直接の御手のわざであるゆえ、そうしたものを心から見つめるときに、やはり天よりの水を受け、力を与えられる。
聖書は神の言葉だと言われる。それはまっすぐに神を見つめ、神から言葉を直接に受けたその記録だからである。それゆえそこには力がこもっている。
私たちも人よりの一時的な、移ろいやすい力でなく、永遠的な神の力をうけるために、単純にしかも真剣に幼な子のように神を仰ぎ続けていきたい。


リストボタン心の清いもの、その人は神を見る

神を見る、それは旧約聖書では禁じられていたことであった。神を見ると死ぬといわれていた。モーセだけが神に近づくことが許されたこと、イザヤのような特別の預言者だけが、神を見たと記されていることからもわかる。(出エジプト記二四章、イザヤ書六章)
しかしキリストが来られて私たちは罪の汚れを取り去られ、赦されて神との障壁がなくなり、それによって神を見ることができるようになった。
神を見るとは神の心を見ることである。人を見るとはその人の心を見ることである。外見でない。神を見ることが許されたとき、私たちは神の心が少しでもわかるようになり、神は苦しむ人、闇にある人に向かっているのがわかる。それゆえそうした状態の人に心が向けられるようになる。
神を知らないとき、だれでも楽しげな人、外見のよいひと、能力をもっている人などに心が向かうものであるが、それが変わってくるのである。
神を見ることができるのはどのような人と言われているか、それは心に何も誇ったり、頼るもののない人、聖書の用語で言えば、心貧しき人である。自分の心にすがる気持ちがあれば神への心が育たない。主イエスが「山上の教え」で、言われた、「幸いだ」という一連の言葉は、後のほうに書かれている神を見るということとつながっている。

ああ、幸いだ。心の貧しい人たちは。神の国はその人たちのものである。
ああ、幸いだ、悲しむ人たち。その人たちは神によって慰められるから。
ああ幸いだ、心の清い人たちは。その人たちは神を見る。
(マタイ福音書五・38より)

悲しみを深く抱く者、そしてそこから神を仰ぐ者は、それによって神からの慰めを受ける、神の心がみえてくる、神からの励ましの言葉が聞こえてくるのである。
神を見るとはまた神の被造物である天然そして人間の心もわかるようになるということである。自然にこめられた神の心、それは至るところにある。人間の心にある罪や悩み、苦しみも神の心をとおしてみえるようになってくる。
神を知らない人にも人間の心は見えるという人もいるだろう。しかし、その場合にはしばしば人間の内なる弱さや自分中心の心など、醜さばかりが浮かび上がってくるであろう。
日本の代表的な作家であった、夏目漱石の作品は晩年になっていくにつれてますます暗くなっていった。岩波文庫で最もよく読まれてきた作品が「心」と題するものであるが、それはその作品名で読者が期待するような心の励ましとか力を与えられるような内容では全くない。逆に、人間関係のもつれから自らの命を断った人の手紙のかたちで記された実に暗い内容なのである。古今東西の文学に通じた晩年の漱石の「心」とはそのように深い影が射してきたものなのであった。 漱石と並び称される作家、芥川龍之介もまた、最後には自分の命を断った。
このように、いくら才能豊かで、思想や文学、芸術に通じているからといって、神は見えてこない。生まれながらの人間はいかに能力が高くても、そのままでは人間の悪や醜さ、はかなさが見えてくるのである。
これとまったく対照的なのが、ここでいう、神によって心清められた者の眼である。神を信じ、キリストによる罪の赦しを受けることで、私たちの眼が新たにされ、汚れたものでなく、神の清いお心がみえてくるようになる。そこからその神の光をもってみるとき、この世や人間にも清いものが浮かび上がってくる。
神を見つつ人間の苦しみをみるとき、そこに何か引き寄せようとする力を感じ、そのような弱さの中にある人へと向かう心が生じる。ここに神の愛のはたらき、聖なる霊のはたらきがある。
聖霊を与えられるとすべてが教えられる、それは神の心がみえるようになるということである。
区切り線
音声ページトップへ戻る前へ戻るボタントップページへ戻るボタン次のページへ進むボタン。