リストボタン弱いからこそ
                  小国フォルケホイスコーレ  武 義和   2008/5

     
1 それでも主はともに

 山形県小国町の山村に、私の母校キリスト教独立学園がありますが、不思議な導きで12年前、私は当時教員として勤めていた学園を退職、家族と共に北欧のノルウェーに行き、1年間音楽のフォルケホイスコーレ(市民による高校か短大、というような意味)で学ばせていただきました。不登校やひきこもりなど、日本の社会や学校の中で立ち止まっていたり、うまく生きることができないたくさんの若者たちにも、豊かな自然の中で学んだり、深呼吸をしたりする場所を作ってあげたい、と言うビジョンが与えられたからです。
 しかし、いざ新しい道を歩みだそうとしたとき、私の心は急に不安で震えました。職もなくて、幼い3人の子どもたちを育てることができるのだろうか?一音楽教師に過ぎない私に、そんなことができるのだろうか、と。
 その時、弱き私に主が与えてくださったのが、ヨシュア記1章5節のみことばでした。旧約聖書には幾度となく「恐れるな、私はあなたと共にいる」というみことばが記されていますが、モーセの後継者として心震えるヨシュアに、主が語られたこのみことばに私も励まされ、押し出されるように新しい道を歩みだしたのです。
 そして12年がたち、与えられたビジョンは、小国フォルケホイスコーレという小さなフリースクールとなり実を結んでいます。確かに主は共にいてくださったのです。
 しかし、私は自分自身の12年を振り返ったときに、そのあまりの情けない歩みに、胸を張ってこのみ言葉を語れません。こんな情けない私であっても、「それでも主は共にいてくださったのだ」、これが今の私の実感です。

   
 2  114敗の勝ち越し キリストの愛
 
 小国フォルケの営みに参加してくれる青年たちと、毎朝「朝の会」という聖書を学ぶ時間を持ってきましたが、その中で彼らに語ったことです。
 私は好きではありませんが、人生を勝ち組、負け組と分ける見方があります。ひきこもりの青年は負け組だと思っていますし、彼らの多くは「自分はだめだ」「生きている意味はあるのだろうか?」と言う激しい自己否定をしています。学びも仕事も恋もしてこなかった青年のこれまでの人生は、ある見方をすれば0勝8敗か1勝7敗くらいだったのかもしれません。
 大相撲は15日間相撲を取り、8勝すれば勝ち越しとなりますが、人生の大相撲は、私は全く違うと思っています。14敗をしたとしても、たった一つ、「本当に大切なもの」「本当に尊いおかた」との出会いがあるとすれば、その一つの白星により、その人生は偉大な勝ち越しとなるのです。そしてその出会いは、私たちの努力やがんばりのご褒美として与えられるものではなく、一方的な、神様の側からの恵みによるのです。これから賛美する曲の詩を書かれた水野源三さんも、ある意味では114敗の大勝利の人生を送られた方です。彼の詩による「キリストの愛」と言う曲をさんびしましょう。

   
3 キリスト教をひとことで言うならば 「主われを愛す」
 
 小国フォルケに参加してくれる青年の中には、一日だけ参加して、もう2度と参加することのない人もいます。全く聖書に触れたことのない青年も多いですから、もしかしたら人生で聖書に触れるたった一度の機会、という人もいるかもしれません。たった5分か10分の会で、私は「キリスト教とはなにか」という話をすることがあります。みなさんならどんなお話をされるでしょうか?私はこんな話をすることが多いです。
 キリスト教を一言で言えば、「私たちを作られた神さまが、私たちを愛してくださっている」と言うことです。私がどんなに弱くても、トホホであっても、なにもできなくても、ひきこもっていようとも、同じように主は私たちを愛してくださっています。主は私たちのすべてをご存知で、いつも私たちの最善をなしてくださるのですから、私たちの人生は安心なのです。
 最後にみなさんと「主われを愛す」を歌いますが、この曲は今回の徳島集会のテーマソングでもあると思います。この曲の中に、われ弱くとも、と言う部分がありますが、私はこれは少し違うと思っています。
 われ弱くともというと、「強いほうがいいけれど、ま、弱くても大丈夫さ」と言うようにも聞こえますが、そうではなく、われ弱いがゆえにおそれはあらじ、なのではないでしょうか? 私たちは弱いことが大切なのです。それこそが誇りなのです。
『私の恵はあなたに十分である。力は弱さの中でこそ、十分に発揮されるのだ。』 コリント 129節 

 
自己紹介
 
 武 義和 1954年群馬県生まれ 
 小国フォルケホイスコーレ代表、作曲家。音楽を通して神様の恵みと愛を分かち合うはたらきもさせていただいています。
 愛農学園、ゴーバル農場、自由の森学園、独立学園で働いた後、家族と共にノルウェーにわたり、1年間教師と生徒の両方の立場で学ばせていただく。帰国後、小国町にキリスト教宿泊型のフリースクール、小国フォルケホイスコーレを設立、現在まで8年間を歩む。今はひきこもっている青年たちとの交わりが深い。作品は「水野源三の詩による賛美歌集」ほか。


音声ページトップへ戻る前へ戻るボタントップページへ戻るボタン次のページへ進むボタン。