リストボタン(263)ほんのわずかな嘘が入っていても、―例えば、虚栄心のかすかな現れ、印象をよくしよう、外観を有利にしようというような考えでも、―ただちによい働きを台なしにしてしまうものである。
ところが、真実を語れば、すべての自然と霊とが思いもかけぬほどに後押しをして助けてくれるのである。真実を語れば、生あるもの、理性を持たぬもの、すべてのものがこぞって証人となり、足もとの草の根すら実際に身動きし、証言してくれそうに思える。(「エマソン論文集」上 岩波書店 一五七頁)
・ここには、真実の強い力が現されている。何らかの虚偽は至るところでなされているだろう。最近の原発事故を隠していたこと、政治家の不正、保険会社の巨額の未払い保険金、プロ野球会で、新人選手を許されない方法で多額の契約金を用いて獲得していたで等々、新聞テレビのニュースには偽りが発覚したことをしばしば伝えている。不正は明るみに出されると大企業であってもたちまち崩れていくほどで、不正というものが本質的にものごとを支える力がないことを示している。
それに対して、真実は一見弱そうに見えても不思議な力を持っている。キリストの真実はいとも簡単に十字架で処刑されて滅ぼされたように見えたが、実はいかなるものよりも強力な力を長い歴史のなかで発揮してきた。それは、万能の神が背後で支えて助けるからである。
ここで地下の植物の根すらも真実を助けようとして動き出すように感じる、というのは、目には見えないようなものですらも真実には敏感に反応して助けようとすることを象徴的にのべている。