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リストボタン(265)ソクラテスは、「どこの国の人か」と尋ねられて、「アテネの人だ」と答えずに、「世界の人だ」と答えた。
彼はすぐれて広く豊かな思想を持っていたので、世界を自分の町と考え、その友人や交際や愛を、全人類に向かって広げていたのである。
(「エセー」(随想録)第一巻二六章 モンテーニュ著 世界文学体系 筑摩書房版 一一五頁 )
・ソクラテスは今から二四〇〇年余りも昔の人である。そのような古い時代であっても、すでに自分が世界市民であること、すなわち真理、英知といった世界に共通のものと交わり、自分の国だけに関心を持つのでなく、世界の人々を愛し、人間全体にかかわる真理の探求に生きたゆえにこのような言葉が自然に出てきたのである。
現在の日本では愛国心を強制的に教えようとしているが、そのような狭い愛国心など養成すればかえって害があるだけである。
キリスト者は本来は、ソクラテスが言った世界市民よりはるかにスケールの大きい永遠の国の市民、神の国の市民なのである。

…イエスは答えられた、
「わたしの国はこの世のものではない。もしわたしの国がこの世のものであれば、わたしに従っている者たちは、わたしをユダヤ人に渡さないように戦ったであろう。
しかし事実、わたしの国はこの世のものではない」。(ヨハネによる福音書十八・36)
私たちは、この世の国に固執して争いあうのでなく、神の国を愛する愛国心を持つべきなのである。