リストボタン(241)われらキリスト教徒であって、遍歴の騎士たるものは、この世の空しい名声ではなく、至高の天国において永遠に続く、後の世の栄光を求めねばならない。この世の名声などは、いかに持続しても、定められた終りのあるこの世とともにいずれは滅び去ってしまうのだ。
したがって、我らが殺すべきは(敵対する人間でなく)、たかぶり、傲慢、気高い胸にも宿るねたみの心、落ち着いた心にも宿ろうとする怒り、食事をとりすぎること、寝ないで番をするときの眠気、…さらに、われらキリスト教徒として、優れた騎士となさせて頂くための機会を求めて、この世の至るところを遍歴するときの、怠惰である。
(セルバンテス著「ドン・キホーテ」後編第八章より)(*)

(*)セルバンテス(一五四七年〜一六一六年)の主著である、「ドン・キホーテ」は、聖書の次に世界的に出版されており正真正銘のベストセラー小説だと言われている。二〇〇二年五月八日にノーベル研究所と愛書家団体が発表した、世界54か国の著名な文学者百人の投票による「史上最高の文学百選」で一位を獲得したという。(インターネットの辞典による)
このドン・キホーテという小説は、「近代小説の嚆矢(物事のはじめ)となる壮大な試みだったのである。」とされ、「『ドン・キホーテ』のもつ深い意味が認識され始めたのは19世紀に入ってからで,その先駆者はシェリングやハイネであり、フローベールやツルゲーネフであった。」(「世界大百科事典」平凡社)


リストボタン(261)深山は学識ある人を養い、羊飼いの野小屋は哲人を養う。
(「ドン・キホーテ」セルバンテス著 筑摩書房版 三一三頁 世界文学体系10)
・ もし人が、心を神に向け、心を真理に向かって開いているならば、山々、森林、自然ゆたかな山小屋、そうしたものは、人間の魂を深め、真理への感受性を高める。そうした自然は、神の直接の被造物であるから、神ご自身のご意志がそのまま映し出されているからである。
しかし、実際には深山や野小屋にいることができない人が多数を占める。その場合でも、神とともに一人あるとき、それは深山や野の小屋にいるのに近いものとなり、神に養われる。主イエスもしばしば群衆を離れて一人山などに退いたとある。 
「アンクル・トムス・ケビン」