ヤマフジの方は、花の房が10~20センチと、ずっと短く、つるも左巻きで、集まっている花の一つ一つはヤマフジのほうが大分大きく、花もほぼ同時に咲き始めるといった違いがあります。フジは、多くの人名にも使われています。
藤原、藤川、藤山、藤田…。 こうしたことからも日本人にフジが愛好されていたあとがうかがえます。
その姿、かたち、そして色も美しく、山野のみどりあふれるただなかに静かにその美しい花を咲かせているすがたは、日本的なよさを感じさせます。
あちこちのフジ園で見かけるのは、ノダフジが多いようです。
これは、日本原産です。
なお、ヨーロッパにはフジはなく、日本のフジとよく似た中国のフジが、1816年に紹介されたと、アメリカの植物図鑑に記されていることをみると、ヨーロッパの人たちはこの美しい植物は200年ほど前にようやく知ったということになります。
私の手元にある、ヨーロッパの植物図鑑には、このフジの説明文を a noble climber(気高い つる植物) という言葉から始めていることからも、フジの気品ある姿が西欧の人の心にも印象的であったのがうかがえるのです。
植物は時として、ブナやトチノキ、マツ、スギの大木のように、見るものの心に強い印象を残すような力を与えてくれるものがあり、また、いっせいに芽吹く春の新緑は神のいのちを感じさせ、またこのフジのようにある種の気品を伝え、また天国の香りをたたえたもの、神の世界にある美をほうふつとさせるものなど、人間に精神的なさまざまのものを与えてくれるものとなっており、まさに「聖なる書」だと言えます。
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