クチナシ 徳島県小松島市日峰山 2004.6.12
この花は香りの点からも、その色や姿の点からも、多くの人にとって最も心惹かれる樹木の花の一つといえます。 この写真はわが家のすぐ裏の山に自生しているものです。 樹木や野草が数千もあっても、この野生のクチナシのような心ひく香りはほかにはないといえるほどです。 園芸店にもクチナシはいろいろと販売されていますが、残念ながらこの野生のクチナシの気品と香りの素朴さにはとても及ばないと感じます。 緑一色のただなかに、その純白の花を咲かせ、類のない香りを漂わせているさまは6月の自然のなかにとくに心に残るものです。 私の妻も、6月は梅雨時でいやな季節だけれど、クチナシが咲く季節だからいいね、と言います。 6枚の純白の花びら、中央の薄い黄色のめしべの色合いがその香りとともに見る者の心に、静かに神の国のメッセージを伝えてくれるのです。
この花は、静岡県から西の暖かい地方にしかないとのことで、野生のこうした美しい姿には寒い地方の人は接することができないようです。この花の果実は熟しても口が開かないので、「口無し」という名前になっています。 この果実は冬には黄赤色となり、菓子や漬け物などの食品の着色料にもよく用いられ、さらに薬用植物辞典には薬用としても用いられると記されています。