秋の代表的な花の一つは、リンドウです。この花は、今年7月に北海道の聖書集会からの帰途、少し時間がとれたので、月山の植物を調べに登ったときのものです。
リンドウは、多くの山歩きを好む人は、秋の山の喜びの一つと思われますが、私もとくに京都の由良川源流にて、深く澄んだ青いリンドウと出会ったのがとくに印象的で、もうそれは45年ほども昔のことですが、いまもその有り様が浮かんできます。
リンドウの仲間には、いままでに実際に私が山で見たのは、アサマリンドウ、リンドウ、フデリンドウ、ハルリンドウ、ツルリンドウなどいろいろあります。この写真のミヤマリンドウは、北海道や中部地方以北の高山帯に自生するものなので、徳島県では見たことのないものでした。草丈は5〜10cm程度、葉は長さ1p前後の小さな植物です。5枚の花びらの間に、先のとがったやや小さくて細い花びらがあって、10枚
ちの花びらのように見えます。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」にも、次のような描写があります。
「ああ、りんどうの花が咲いている。もうすっかり秋だねえ」カムパネルラが、窓の外を指さして言いました。
線路のへりになったみじかい芝草の中に、月長石(げっちょうせき)ででも刻まれたような、すばらしい紫のりんどうの花が咲いていました。…
カムパネルラが、そう言ってしまうかしまわないうち、次のりんどうの花が、いっぱいに光って過ぎて行きました。
と思ったら、もう次から次から、たくさんのきいろな底をもったりんどうの花のコップが、湧くように、雨のように、眼の前を通り、三角標の列は、けむるように燃えるように、いよいよ光って立ったのです。(6、
銀河ステーション より)
こうした描写は、宮沢賢治も、北国のリンドウ、とくにその紫がかった青色が彼の心に刻まれていたのがうかがえるのです。
北国の厳しい寒さにも耐え、短い夏にほかのリンドウとはちがった、独自の花のすがたを見せるこのミヤマリンドウは、小さく目立たないけれども、厳しい風雪に耐える力を与えられているのです。私たちもまた、弱く小さなものであっても、神に結びつくときには、本来では有り得ないような力をいただくことを思わせてくれます。(文、写真とも T.YOSHIMURA) (文、写真とも T.YOSHIMURA)
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