このエゾツツジは、樹木でありながら、このように10~30cmという高さで、火山岩の石ばかりのような場所に美しい花を咲かせます。
このツツジは、アジア北東部とアラスカ、日本では本州北部(早池峰山・岩手山・秋田駒ヶ岳)と北海道の高山という寒冷地に分布するもので、冬の大量の雪、氷点下数十度という厳しい寒さとはげしい風に耐えて生き延びている植物なのです。 その環境の過酷さのために、このような小さな丈の植物となっています。
同じツツジでも、徳島県の高越山(こうつざん標高1133m)には、高さ6m、樹齢400年にもなるという大きなツツジ群落があり、これは西日本最大とのことで天然記念物にも指定されています。また、市街地の道路際に植栽されているヒラドツツジのような都会の車や人間と同居して生きているツツジもあり、釣鐘形のドウダンツツジの仲間など、同じツツジでもさまざまのものがあります。
このエゾツツジは、岩ばかりのような大地にしっかりと根を降ろして、色彩のはっきりした美しい色合いの花を咲かせます。草のように小さく、手でも抜き取られそうなほど弱々しくみえるのですが、そこにほかのツツジ類では到底耐えられない厳しい環境に耐える強靭さを秘めているのです。
聖書には、「力は弱さの中でこそ、十分に発揮される」(Ⅱコリント12の9)とありますが、こうした高山に咲く植物のことにもあてはまるように思います。 (文、写真ともT.YOSHIMURA)
|