休憩室 2003/7
○火星
空の星もほとんど見られないような都会にいても、今回の火星の大接近によって、とくに明るく見えるので容易に観察できると思われます。深夜十二時頃に南東のほうの空を見ると、とても明るい、赤い星が見つかります。それが火星です。地球の仲間である惑星であのように赤いのは、火星だけで、そのために火星という名称がつけられています。火星は二年二カ月ごとに接近するので、二年前の六月二十二日にも接近していたし、また二年後の二〇〇五年十月三〇日にも再び接近します。しかし、今回のように近づくのはおよそ六万年ぶりで、再び今回のように近づくのは二八四年後ということです。
今回の明るさは、最大のときで、マイナス2・9等で、木星が最も明るいときでも、マイナス2・5等、恒星のうちで、最も明るい大犬座のシリウスは、マイナス1・5等なのですから、その明るさが想像できると思います。なお、宵の明星とか明けの明星として知られている金星はマイナス4・4等の明るさで、これは別格です。
現在では、夜空の星や野の花といった、神の創造の雄大さや美しさに直接に触れる機会がますます少なくなりつつあり、それが子供の心の荒廃にも関係しています。子供に伝えるためにはまず大人がそうした自然に心を向ける必要があると思われます。
○礼文島で見られた植物たちのうち、いくつか印象に残った花を書いておきます。
・レブンウスユキソウ(礼文薄雪草)これは、有名なヨーロッパアルプスなどで知られているエーデルワイスとよく似た花です。美しさの点からいえば、ほかにたくさんの花があるのですが、この花は高山の厳しい気候のなかで咲き、白い星のように見えるので、とりわけ有名になっています。
この名前のエーデル(edel)とは、ドイツ語で「高貴な」という意味、ワイスとは、weis で、英語のwhite 、つまり「白」の意。ドイツ語では、ヴァイスと発音します。それで、この名前の意味は、「高貴なる白」という意味になります。この花はスイスの国花であり、また世界的に有名となった、ミュージカル「サウンド・オブ・ミュージック」の中の曲の名としても知られています。
・エゾニュウ…これは、礼文島の山地にとりわけ目立つ大型のセリ科の植物です。春の七草の一つである、セリの花をぐんと大きくしたようなものです。高さは一~三メートルにも達するものです。ニュウとはアイヌ語だといいます。アイヌの人たちもこの花に関心を持っていたのがうかがえます。これは、東北地方から北海道、そして樺太や千島の山中に生える野草です。
・イブキトラノオ…徳島県では剣山やその近くの塔ノ丸などの高い山で見られる、長い穂の様な形をした花ですが、礼文島ではたくさん咲いていました。しかも剣山周辺のものよりも、大型で花も大きいものでした。
・エゾカワラナデシコ…四国では山を歩いていてもごく少数しか見られないカワラナデシコですが、礼文島では、平地に近いところでも咲いており、少し山道をあがると、たくさん咲いているのが見られます。草丈は低いのですが、美しさは変わりません。中国のナデシコであるセキチクやアメリカナデシコと区別して、日本のナデシコなので、ヤマトナデシコとも言われますが、この花の持つ雰囲気はたしかに日本女性の本来のよさを感じさせるものがあります。