終わることなき希望 ヒルティの詩から
これまでわたしは十分自分のために生き、
その悲しみを味わいつくした。
自分で造った家はくずれ落ち、
そのあとから新しい家が建てられた。(*)
永遠をめざして立てられた家、
時間の流れによっても壊されない家、
天の火はそこに燃え立ち、
捧げ物の煙は 日ごとに立ちのぼる。
神の怒りは解け―戸は開かれた―
貧しき魂は解き放たれた!
わたしの前途にはかぎりない希望と
驚きに満ちた時とが続いている。(ヒルティ著「眠れぬ夜のために」上 九月一日の項より)
(*)以下の箇所の原文
Ein Haus,fur Ewigkeit gegrundet,
Das keine Zeitflut untergrabt,
Aus dem,von Himmelsglut entzundet,
Ein taglich Opfer auswarts strebt
Der Zorn ist aus- die Tur ist offen-
Die arme Seele ist befreit!
Vor mir liegt ein unendlich Hoffen,
Und eine wundervolle Zeit!
○この詩は、古い自分が滅び、そこから新しい人間とされたとき、その魂のうちになにが生じてくるのかを印象的に描いている。ヒルティ自身の長い生涯の実際の体験が背後にあるのを感じさせる。
長く自分のために生きてきた、そうして築き上げたすべては崩れ落ちていった。それがすべて崩壊していくのは、当然のことであった。神に根ざしていないものは遅かれ、早かれ壊れていくものだからである。
しかし、神を信じ、神に頼っているものには、その崩れ落ちたところから、新たな家が建てられていく。それは神ご自身がなさること、自我の崩れ去ったところに、新たな芽が出るように、神と結びついている魂には必ず新芽が萌え出ずる。
そしてそこには自我の欲望の炎でなく、天来の火が燃え始める。そして自分に取り込むことでなく、神への捧げ物が日ごとになされていく。
そのような変革をとげた魂は、神のさばきとは無縁のものとなる。狭い自分というなかに閉じこもっていた魂はようやく自由な世界、霊的な世界に羽ばたくようになる。
前途にはもはや、闇や混乱がみえるのでなく、逆にどこまでも続く希望、永遠の世界へと通じている希望があり、この闇の世界のただなかにあっても、時の流れすら驚くべきものとなる。その時間の流れのなかで、驚くべきことが生じていくのを霊の目によって実感するゆえに。