詩集 星 め ぐ り
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目 次
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不思議とこのまま どこかへ連れ去られそうな夜 天と地を創られた方を思って ねむる
夜はくらく 夜はくらく みずおと
櫂のおと
わたしはひとつの舟 ちいさないのち みずさきに 招きみちびく 一つの星
夕ぐれの空に 雲の羊が 一匹 二匹 三匹
一列になって 帆を上げた真っ白い船に乗る
四匹 五匹 六匹
羊の綿毛が風になびく
遠く合図の風笛が響く 無限の英知に分け入る船が 間もなく出航です
星の野を すべるように行く舟は 天の道を進む祈りの舟です
―神の愛が すべての人にとどまりますように われらの罪が除かれますように
歌うように後を引く 祈りの長い尾が それに従う
魂には故郷がある いつか帰るところがある
ちいさな永遠が ひとの魂にも 食い入っている
光る波間を揉まれながら わたしをのせてゆく舟は ちいさなちいさな木の葉の舟 けれどその舟 沈まない舟
波間におどる青い魚 はるかに光る真昼の星座 波のまにまに見え隠れする 昨日とちがう今日
不吉な雲のわく中を どこへ行くのか ぶ厚い雲を割って射す 十字の光りがみちびく
昨日も今日もその舟は 危ういこの世を揉まれ行く それでもその舟なぜなのか みすぼらしくも沈まない舟
このまま何も持たないで 素手で歩く と思えるとき ただ青空に融けていく と思えるとき 大きな自由が入ってくる
どこからか こころに響く微かな歌が ふるえる弦のように鳴るとき わたしは無故郷になる
永遠のいのちを与える、と 真理なる方が言われる ―すべてを捨ててわたしについておいで 今日は 吸い込まれそうに深い藍の空だ
旅先でふと出会ったのは、とある小さな聖堂の、 石像のシスターの胸のあたりに見た、 バラのような形に滲んだ血の衝撃でした。 その古い傷跡が何百年、もしかしたら 何千年、わたしを待ち続けてくれていたと、瞬間、感じたからです。 見上げる十字架から、両腕を広げ、身を傾けて、 旅人を抱きとろうとしていたのは、 シスターと見えたあの方キリストでした。 なぜなら、その時わたしはそのまま足もとから崩れ、 この旅の終わりを知ったからです。 この世の難破船のように漂い来たものが、 心も体も投げ出し、行きつく港を得たように、 その腕に倒れこんだのでした。
魂のどこかに 通路がある 遠い風に鳴る通路が
そこから星の光りが流れ込み そこから風笛の音が響いてくる この世ならぬ甘美な歌も
その通路をたどって出入りする あこがれが出入りする
永遠への鼓動が出入りする
それゆえに風が語る言葉は わたしの胸をすこしだけ 苦しくも 悲しくも よろこばしくもする
---今だ、天の窓が開いている
山の端を 全速力で走る風の群れ 雲の足がそれに従う
風の息が地をかすめるから わたしも行こうこのままで 振り返らず行こう
鳥のように行こう新しい空へ 風笛の響きとともに行こう 何も持たず素足のままで
聖霊の火よ 灯ってください心にも 罪ゆるす霊よ
星の見えない暗い夜にも 示してください あなたの道を
灯ってください 清い火よ 汚(けが)れしものを焼き尽くす火よ
淡い夕ぐれに光る 細い雨の中でもちいさく光る ホタルが来て宿を借る ホタルの寝床はどんなだろ
ホタルの寝床はどんなだろ ほうーっと金のともしび灯り 雨の中でしずかにもえる 迷ったときの道しるべ
乾ききっていた土地に ゆうべ 雨が降りました ひっそりと 主が通って行かれたのです 木々がまき散らした緋色の木の葉 色とりどりに散り敷いて 行かれた道を飾っています 秋の空も群青に 主のみわざを讃えています おおいなる静けさのなかで
窓辺に来てノックする ちいさなくちばしでコツコツと 時のちいさな訪問者 忘れたことを呼びさます 何やら叩くコツコツと
時のちいさな訪問者 青い空からやって来た 小鳥よ、何を呼びさます 目を覚ませ 眠った者よ と こころの扉を叩いています
ひかり 主のひかり 地上を満たす 夜明けを待つ人よ 陰の谷から出ておいで みんなみんな出ておいで
こころの暗やみから出ておいで 囚われの古い館から出ておいで
すずかぜがあなたをいやし あお空があなたを包む 光があなたを生み あなたを生かす そして満たす 主の愛で 満たす
神は与える すべてを与える 愛する者に与える 地の塵に等しい者に与える
神は与える 天地を与える こころの宇宙を与える 無限の夢を与える
神は与える苦しみを与える その苦しみを超える力を与える 神は与える ご自身を与える
神は与える ひかりを与える 振りまくように与える すべての人に与える
そっと与える 愛を与える だれも気づかないように与える いま身を傾けてその人を包む
秋の陽が傾いていきます あんなに激しかった 蝉の声がしだいに遠退いていきます
主よ 賛美の歌を歌います 霊の目を開いてください もっとあなたが見えるように
主よ 賛美の歌を歌います 霊の耳を開いてください もっとあなたの声が聞こえるように 主よ 賛美の歌を歌います すべてがおぼろにしか見えぬこの世から 声の限りに歌います
あなたの愛がもっと遠くに届くように あなたが身を傾けて抱くように守る この青い星を感謝して
主よ 賛美の歌を歌います 主がお命じになった時間だけ この夏の命が満ちる時まで
真冬の今朝の 真っ青な空を見ていると 影絵のように 過ぎた時が流れ行く
あの長い 魂のさすらいの季節もまた 神のみ手の中にあったのだと なぜかこのごろそう思う
悪人のために祈れ 迫害する人ひと その人のために 祈れ 祈ることは愛することだ
わたしは愛について まだよくは知らない けれど祈りはそれを知っている 祈りがそれを 教えてくれる
わたしの歌は 雲と共に流れ 空の高みに消えて行く
わたしの歌は 小鳥の翼 麦畑の上で風となる
木の枝が風に かすかに歌うのと同じ
ただそれだけ
呼吸のように生まれ 呼吸のように消えていく 言葉の谺(こだま)に乗せられて
もえるもえる 夕やけもえる なぜにもえる あかくもえる 火のようにもえる なぜにもえる 神の愛にもえる ひとのつみももえる
つみゆるす十字架 血まみれの十字架 イエスは泣いておられるのか 微笑んでおられるのか
夕やけもえる なぜにもえる だれのためにもえる まっかにもえて もえおちて
人の手が作り出すものや 人と人の友情だって ときに変色したりもするけれど 真の染色家である神の手によれば どれもこれもみな美しい
破れていても美しい 虫食い葉なら なおゆかしい くすんでいても深い銀に光り 散り敷く一枚一枚が路上を温め 踏んで行く人の心を深く色鮮やかに染める
うろこ雲の道を歩く どこまで続く この天の広さ 明るさ 何を語る 真っ青な空に うろこ雲 真っ白に敷かれ
導いてください 天を見上げ どこまでも行きます ひとつひとつ踏んで行きましょう 飛び石のような 美しい道を
後になり先になり いつも共に歩いている 姿は見えない影もない 後になり先になり時を刻む
それはチクタクと打つ 時計の振り子のようなもの? 姿は見えない影もない 後になり先になり離れない
それは 時の浜辺を打つ波の音? それはいつもいつも いのちと隣り合わせ
わたしの行くところ わたしの帰るところ 後になり先になり歩いているもの 後になり先になり離れない
小鳥ととけいのカット
今日という 不思議な空間 わたしはぽっかりと 宇宙に浮かぶ星の上
わたしたちは日々の小さな生活の中で 思いがけない新しい星と出くわす そのために 泣いたり笑ったり 悲しんだり苦しんだりしながら めぐる
もう二度ともどらない軌道を こうしてめぐる だが日々出くわすどんな「時」も 神のみ手にあれば 星のように輝くだろう
わたしも 与えられた生と死とのあいだを 歌いつつ 嘆きつつ 天の広さを思いつつ 大きな手に ちいさな星のように支えられつつ生きる
秋晴れの空を 飛行機雲が西から東へ 一直線に伸びてゆく 平和なときも 戦のときも 空の青さは変わらない
なんという青 なんという清浄さ なんというおおらかな深みだろう
天上から見れば 地上はどんなに見えるであろう 人間世界の薄暗さ
そしてまた こころよ ささいなことにまろび転がる わが愚かな心よ…恥じなさい
太陽が 山の葉に沈むとき さいごに残る 細い糸 金に輝くとき 細きみ声 胸に 射しこむ ―あなたが一番弱いとき あなたは一番強いのです
聖なる星の夜 木々の上に 銀のしずくを散らしたような
永遠のまなざしがまたたき 研ぎすまされた浄めの刃が 天地をはしる
ぶ厚い雲が割れて 光が斜めに地を貫いた
その真下にいた人は 幸いにも聴いただろうか
まばゆい天から聞こえてくる 天使たちの喜びの声を
イエスさまは小ろばに乗って エルサレムに入られた そのとき小ろばはイエスさまと一体だった 何をしても役立たずだった小ろば 薄暗い納屋の隅でわらを噛んでいた小ろば
でも小ろばはいちどだけ跳ねあがった イエスさまをお乗せしたのですから 短い生涯のうちにいちどだけ 世の救い主が向かう十字架に続く道を 悲痛と喜びを噛みながら歩いたのですから
神さまが 変えてくださる すべてを良きことに
聖霊が 教えてくださる いま為すべきことを
行け、と言われる方向に行く 留まれ、と言われるところに留まる 風は思いのままに吹いてくる ○
いつの間にか風が立ち 気づかぬところに巻き起こり 木の葉を揺らし
ひとの心をふるわせる その風の声を聴く心は 驚きのあまり起き上がり 目を開き 生きかえる
どこに行くかもわからない いつ来るかもわからない 風は思いのままに吹いている
一度死ぬ 新しく 生まれるために
自分に死ぬ 新しく 生きるために
何度でも死ぬ 何度でも 生まれるために
古い自分に死ぬ 本当の自由を 生きるために
雨よ 優しい雨よ わたしたちの病める地に 降りそそぎ 傷んだこころを 癒してください
雨よ めぐみの雨よ わたしたちの荒れ地に 降りそそぎ 渇いたたましいを うるおしてください
雨よ 天からのいのちなるしずくよ 不実が重なる月日の上に 降りそそぎ 真実まっさらな朝を わたしたちにも開いてください
ほんのりと夕空 サーモンピンクに染まるとき
罪ゆるされたと ふと 心に示しを受けるとき
かみさまのお心に 思わず触れたと思うとき
空はいつも映しています 神さまのこころを
青い空 白い雲 無限と永遠 生も死も すべてを包み
見上げる人に語っています そしてうたっています。
いま罪ゆるす歌を 天使たちが歌っています
また取り去りたもう
人は何かを得ても また一方で 何かを失くしながら生きている 主は与え また取り去りたもう 誉むべきかな
―でも さいだいのよろこびと さいだいの悲しみが同時に来たら ひとは泣くのでしょうか 笑うのでしょうか ああ ひとは虫けらのようなもの
苦悩や 悲しみや よろこびの 明け暮れの中でふと思う 主は与え また取り去りたもう 誉むべきかな※ 手放すこともまた悪くはないと
※ヨブ記1の21
なぜなのか 知る由も無いけれど 恐れも 不安も いさかかもない 主の助けと導き感じる時 鳥の声 遠くで よろこびを告げつつ歌う 秋の光りに柿の実熟れ 青い空は清く深まり しずかです この時 風もかすかに吹いていて…
数々の清いよろこび…それは人生の宝です でも それらはもしかして その人しか知らない暗い谷間を 通り過ぎねば知ることのできなかったもの 人には肩代わりしてはもらえなかったもの かも知れません 病気や苦難、悲しみ、苦しみ 自分の罪 それでも それらはただ単に 悪いものでも無駄なものでもなかったようです それらは「浄化」という名 よろこびと無二の親友のようです
苦しみを掘る 痛みと共に掘る そこに隠されている あらたな宝をさがしながら 掘る
掘る 心を掘る 硬い土を耕すように 天からの雫が じゅうぶんに染み透るように
掘る 今日を掘る 通り過ぎようとする今を掘る 今わたしを支える言葉を掘る 神の言葉を掘る
来てすわろう 星降るくさむらに来て みんなみんなうさぎになって 浴びよう 今夜の星あかり
とこしえのひかりあびて またたいて かがやいて みんなみんな 幼いころの自分になって あそぼう
この世に送られ 星のように 地上に置かれた人よ
ともに結ばれ 神に結ばれた人よ 無限の時を貫く糸で
聖書の言葉がなぜか皆、自分に向けて言われているように思えたときから、わたしはそこから目が離せない。 寄る辺ないものが、そこに居場所を見つけたように。海路を見失った船が波間から灯台の光りを目で追うように。 走りながら、眠りながら、迷いながら、時には見いだし、時には見失い、ときには波に揺られ揉まれ転がりながら聴く。 どんなときも、その言葉は休みなく、絶え間ない。 魂に響くその言葉は、この世の現実と重なって、まるで謎を解くように、こころの鏡に二重写しになるからです。
明け方に見る流星 目を止める間もなく 銀河を横切り例文
眼裏をはしる アブラハムも見た 祝福の金の糸
与えられた今日いちにちを祈る 流星のように 銀河を横切り行く今日を
わたしらもまた アブラハムの末裔 |