(193)… 稲光がするどく光った。こだまする雷鳴の響きで
天には神がいまして、神が創造した世界を支配していると思わせられた。
その時、かつて聞いたことのある、天の正義の話しを思い出して、
悩む心も、なごみ和らぎ、朝まで平和の眠りについた。
(「エヴァンジェリン」ロングフェロー作 (*)岩波文庫版48P )
Keenly the lightning flashed;and the voice of the echoing thunder
Told her that God was in Heaven,and governed the world He created;
Then she remembered the tale she had heard of the justice of Heaven;
Soothed was her troubled soul,and she peacefully slumbered till morning.
○エヴァンジェリンが、悩み悲しめるときに雷鳴がひとときの平安を与えた描写。重荷をかかえた心にとっても、ときにこのような稲妻と雷鳴が神の力と支配を思い起こさせる。そしてその苦しみを鎮める働きをする。自然は不思議な力をもっている。多くの人にとっては単に恐れでしかないような雷の現象や、そのほかの様々の自然のすがたや現象も、神に向かうまなざしを持った者には、新しい啓示や神からのメッセージとして実感する。この詩は私が三十五年以上も前に読んだが、そのときに美しく静かな自然描写、そして人の心の動きに強い印象をうけたのを思い出す。
(*)ロングフェローは、一八〇七年アメリカ生まれ。「エヴァンジェリン」は十八世紀の半ばから終わりにかけて、イギリスとフランスが新大陸の支配を争った時代の長編詩。フランス系の移民村の若き女性エヴァンジェリンは生き別れとなった夫の跡を尋ねて広いアメリカのあちこちをさすらった。著者のロングフェローは、ハーバード大学で教鞭をとった学者であったが、アメリカの生んだ最初の大詩人として知られている。この詩は私が三十五年以上も前に読んだが、そのときに美しく静かな自然描写、そして人の心の動きに強い印象をうけたのを思い出す。
盲人バルトロマイ (ロングフェロー)
目があっても
闇と苦しみや悲しみの中にあって、
見ることができない者たちよ、
思いだせ、あの三つの力強い声を。
「イエスよ、私を憐れんで下さい!」
「勇気を出せ、立って行け!」
「あなたの信仰があなたを救ったのだ!」
Ye
tha have eyes,yet cannot see,
In darkness and in misery,
Recall those
mighty Voices Three,
have mercy on me!
Courage,get up,go!
Your faith
has saved you!(*)
(*)三つの声の部分は原文では、新約聖書の原典であるギリシャ語文となっている。ここでは、それを英語に訳した。
原詩はもっと長いものであり、ここにあげたのは、この詩の最後の部分。ロングフェロー(一八〇七年〜一八八二年)は、アメリカの詩人で、ダンテの神曲をアメリカで初めて訳した。ハーバード大学教授。
・この三つの声は、単に盲人とかに限らない。この詩の作者のロングフェローも聖書に記されているこの三つの言葉はどのような状況に置かれている人であっても常に神からの励ましの言葉となることを自ら知っていたのがうかがえる。病気や家族の問題、ほかの人間同士の問題、職業上の問題、あるいは事故や災害に襲われたとき、どうすることもできない苦しみに追い込まれることがあるだろう。そのようなとき、私たちができること、それはここに記されている「主よ、憐れんでください!」という単純率直な叫びである。
それによって、主は私たちに力あるみ言葉を下さる。下さらないように見えるときであっても、希望をもってまち続けるときには、「立ちなさい!」という励ましの言葉を聞くことができる。
そして困難の時であっても私たちが素朴に主イエスにすがるとき、その信仰だけで御手を差しのべて下さる。