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ヒガンバナ 2012.10.4 徳島県小松島市

ヒガンバナ    2012.10.4     徳島県小松島市

ヒガンバナは、緑の最も濃い9月に時期を定めていっせいに野草とは思えないような華麗な赤い花を咲かせるゆえに、また葉を見せずに咲くというほかの多くの草花とは異なることもあり、また人間には有毒なリコリンという成分を含むということなどから、特に昔から知られてきた花です。
日本全国に分布している花ではなく、東北や北海道では見られない花で、北海道に行ったとき、ヒガンバナは見たことがないと言われた人がいて意外に思ったものです。
残念なことに、ヒガンバナは、日本では間違った知識、言い伝えのゆえに広く愛好されることはなかったといえる花です。この花が、野草として見られるのは、山でも人家のある付近に多く、ほかの野草のようにまったく人家のない、人のすめないようなところに咲いたりしないために、このヒガンバナは人間の生活とかかわっていたことが推定されています。この花の球根(鱗茎)は、良質のデンプンを含んでおり、水でさらすことによってリコリンが水に溶けて除かれ、デンプンが残って食用になり、冷害などで米ができず飢饉となったときには、それを食用としていたと言われています。また、薬用としても、漢方では、咳止めや去痰、催吐薬に用いるとのことです。

有毒成分を含むといっても、冬に美しい花をよき香りとともに私たちに見せてくれるスイセンもヒガンバナ科であり、やはり同じリコリンを持っています。

以前に、スイセンの葉をニラの葉と間違って食べて中毒を起こしたことが報道されていたようにスイセンも有毒成分を持っているのですが、こちらのほうは全くそのような有毒植物という意識を持たれていないのです。マンジュシャゲとも言うのは、サンスクリット語で、マンジュサカという言葉があり、それは「赤い花」、「天上の花」を表すことから来ているといいます。)
ヒガンバナの仲間としては、山に見られるキツネノカミソリや、花の美しいナツズイセンなどがあり、さらにこうした花から多くの園芸用品種が作られ、リコリスと総称され、50種ほどにも及び、ヨーロッパでは、愛好されており、日本でもヒガンバナを道路の中央分離帯の街路樹の根元にたくさん植えている通りを見たことがあり、次第に、愛好する人、庭に植える人も増えています。
私の子どものころは、ヒガンバナに対する偏見、間違った考えがあり、さわってもいけない、などと言われたものですが、それはまったく根拠のないことです。昔は植物に対する正しい知識がなかったため、こうした間違った言い伝えが未だに残ってしまっているのです。
ヒガンバナの球根は深く土中に入り込んでいて、移植ごてなどがないと採取できないものですが、付近の畦道などから採取して庭に植えると毎年鮮やかな花を咲かせてくれます。
ヒガンバナの独特の美しさ― とくに緑一色の山野に咲く姿はほかに類のない光景を生み出すものであり、初秋の美しい彩りとなっているゆえに、この花も神の特別な被造物の一つとして、愛好するようになりたいものです。(写真、文ともT.YOSHIMURA

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