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カツラ(桂)
    徳島県中津峰山      2007.11.3

これは、桂の大木です。これは、中津峰山(標高773m)登山口の一つにある渓谷沿いにあります。

この山は、西日本第二の高峰である剣山から延びる山なみの東端にある山で徳島県の東部地方一帯からよく見える山なので親しまれている山です。  この付近にはもうかなり長い間行くことのできなかったのですが、「いのちの水」誌に桂のことを書いたこともあり、また、その美しい黄葉に触れることと、独特の香りを持つ桂の葉を紹介したいとの思いもあって、妻とふたりで休日の午後訪れたときの写真で、桂の落葉を集めているところです。 

カツラ 2008.1.13

カツラ 2008.1.13
 ここには、数本の堂々たる桂の木が自然に生えています。桂はこうした渓谷沿いを好む樹木なのです。そして自然に一つの幹以外にこの写真のように何本もの幹が成長して独特の姿となります。巨木となれば30mもの高さにまで成長するということです。
この木に初めて出会ったのは、40年以上も前、私が高校一年のときのクラス遠足で初めてこの地域に行ったときです。その後大学を卒業して県内の山々を歩くことが多くあったのでここには一人で、または生徒たちを引率して何度となく訪れたところです。そしてここから頂上までの自然ゆたかな、それだけにほとんど人とは出会うことのない山道を登って行ったものです。
かつて、県内の中央部の山深いところに目立ったピークをみせている高丸山(1438m)に登ったときに、他ではみたことのない、ブナの直立した大木が林立しているのに接したことがあります。そのときは単独の登山で、ほかには誰一人登る人もいないしずかな山でした。その樹木の群れは私に強い印象を与えたのです。その大木のそばで引き寄せられるようにしばしたたずんでいました。そこには、神の揺るがない力、すべてを受け入れ、どんなものによっても打ち倒されない力のこもった静けさを感じたのを今も思いだします。

そのように繰り返しこの桂のある道を歩いて、いつも心になにかを語りかけるようなものを感じてきたのがこの桂の大木でした。 樹木、とくにこのような歳月を経た大木には、ほかには感じられない重々しさがあります。数知れない風雨を受け、それによって倒されることもなく、かえって力強く成長し、太陽の光を浴び、地中のさまざまの養分や水を得てこのような風格ある樹木となっているのを思うとき、はかることのできない思いがここに込められているように感じるのです。

 一人で、こうした年月を経た樹木のそばにたたずむときに、人間からは与えられない平安、そして励ましを受けることがしばしばでした。

 聖書が書かれた地域では大木として知られていたのは、レバノン杉でした。

「主の木々、主の植えられたレバノン杉は豊かに育ち…」(詩編10416)と記されているように、この詩の作者も、こうした特別に力を感じさせる大木には神ご自身が植えられたと実感させるものがあったのがうかがえます。   (文、写真とも.YOSHIMURA