リンドウ
山口県秋吉台高原 2013117.11 撮影
何日も歩き続けて、ようやく日本海に流れる由良川の源流地帯にたどりつき、そこで見いだしたのが、リンドウだった。

途中の困難さのゆえに、いっそうこの花の青い色とその姿が深く心に残り、いまなおそのときの状況がありありと思いだされる。

そのころは私はまだキリスト教信仰とは無縁だった。しかし、由良川源流の静かな流れのそばで咲いていたこの青紫の花は、神からの賜物だった。当時はどのルートをとっても長大な山や谷を歩いて超えていく必要があるために、この地域にはほとんど人は訪れない。じっさい、1日中早朝から夕方まで歩き、登りつづけたのに、一人も人間には出会わなかった日が何日もあった地域である。そのような隔絶したなかで静かに咲いていた。

耳をすますとそこから天来の音楽が流れてくるようなそんな雰囲気だった。  (写真・文ともにT.YOSHIMURA

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