休憩室  1999/6

ホタル


 わが家の下にある小さい谷川は、幅わずか二メートルほどの小さいものであって、ほとんど水は流れていないことが多い。しかし上流の一部にはいつも水がある。そのわずかな流れのなかに、ずっと以前からホタルの幼虫が住んでいます。そして毎年六月の初めころになると、数は少ないけれども、ホタルが暗闇に点滅して遠くのものを呼び覚ますような、なつかしい気持ちにさせてくれます。

 闇に輝く光はだれの目にも印象的であり、心をなごませてくれるものです。聖書にも「光は闇のなかに輝いている。そして闇は光に勝たなかった。」(ヨハネ福音書一・5)とあります。

 清流に住み、その清い流れを私たちに分かち与えようとするかのように、澄んだ光を点滅させてゆっくりと飛ぶホタル、これからも生き延びてこの谷間で光を放ち続けてほしいと願っています。

六月に咲く花と言えば、たいていの人の心に浮かぶのはアジサイだろうと思います。私も同様ですが、それとともに、私にとって同時に浮かぶのが、クチナシウツボグサ、そしてハンゲショウといった植物です。

 わが家の裏山にある自生のクチナシのその素朴で端正な姿、そしてその何も代えることのできない香り、それは得難い神からの贈り物です。(園芸用の八重のクチナシは公園、家庭の庭などで多くみられます)

 このような野生のクチナシは今日では、ごく少なくなっていて、園芸店でもおいていませんし、一般の家庭でも見かけることはありませんので、多くの人には目に触れられないものとなりつつあるのが残念です。

 ハンゲショウは上部の葉だけが、部分的に白くなり(斑入り状)それが自然にできていく珍しいものです。その葉や地味な花のすがたが、静かさと落ちつきを感じさせる植物です。

 植物は沈黙でありつつ、その静けさのゆえにいっそう、心して見るときには言葉を超えた神からのメッセージを感じさせてくれるものがあります。


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