マルバアオダモ
徳島県小松島市日峰山 2008.5.2
この花は、私たちのふつうの生活で取り上げられることは少ないようです。白く小さな羽のような花びらであり、木々の中でとくに光が射しているところなどでは、静かに白く輝いているように見えるものです。
子供のころから近くの山で見かけていても、だれも名前を知らず、花瓶にさしてあるということもなく、花が咲く期間は短いし、咲いていても、幹の上のほうで花の形もよくわからず、枝を折り取ることもしにくいからです。平地では庭などでも見かけたことはありません。白い花びらは細く、長さは6〜7ミリ程度のものです。
高さは5〜15メートル程度となります。
アオダモという木の名前は枝を切って水につけておくと水が青くなるからです。このアオダモのなかまは、トネリコと言われ、このマルバアオダモも、別名トサトネリコともいいます。ヨーロッパのトネリコの仲間では巨木になるため、北欧の神話にも登場し有名なものです。トネリコという変わった名前は、トヌリキ(戸を塗る木)よりきたと言われます。
この木に寄生する虫により分泌した白蝋(はくろう)をトネリといい戸滑りに用いたということです。(牧野富太郎植物図鑑より)。この木の材質は粘りがあり優れているため、各種建築、器具材として用いられ、野球のバットなどに特に用いられ、野球のイチロー選手のバットをこれでつくっているという記事を見たことがあります。 さらに昔から刈り取った稲を干すための木としてとくに植栽してきたということで、さまざまのところに用いられてきた木です。
樹木はこのように実用的な目的から宗教的な意味をも感じ取ったりされてきましたが、この花はそうしたすべてと関わりなく、山の木々間でひっそりと咲いていて、近づくものに静かで清い雰囲気をなげかけている花です。 (文、写真とも.YOSHIMURA)
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