ツリガネニンジン(キキョウ科)
伊吹山(標高1377m、滋賀県と岐阜県の県境にある)2009.9.21


この野草の花は、伊吹山の1000メートルを越える山道に見られたものです。このような山地でなくとも、平地の野にも見られますが、徳島では、あまり見られなくなっています。高さは30cm1mほどです。キキョウの仲間(*)だということはその薄紫色や形からも感じられます。

*)キキョウ科は、Campanulaceae(ラテン語で、カンパーヌラーケアエと読む)といいますが、それは、ラテン語の campanula (カンパーヌラ)小さい鐘、鈴を意味する言葉から作られた言葉です。
日本語のツリガネニンジンという名は、花の形と、根がニンジンのように大きいからです。なお、このラテン語から生じたイタリア語の campanella(カンパネラ)は、人名として使われ、宮沢賢治の銀河鉄道の夜という作品にも、ジョバンニ(ヨハネ)とともに現れるので、なじみのある方も多いはずです。

この写真の花は、頂上へ向かう一般の道とは違って、ほとんど人が通っていない山道で見出したものです。天に向かい、また周囲の自然のただなかで、さわやかな声で賛美しているかのような雰囲気があります。この花は、おそらくだれによっても愛され、親しみを感じさせると思われます。人間には好みや相性というのがあって、だれでもが近づきやすい人というのはそう多くはないと思われます。
しかし、自然のこのような野草の花やその姿は、近づくものはだれでもがほっとするようなものをたたえています。 キキョウ科のラテン語名のように、清い鈴の音を大自然のなかで静かに響かせているようです。

ツリガネニンジン</B>(キキョウ科)    伊吹山(標高1377m、滋賀県と岐阜県の県境にある) 2009.9.21

対立や憎しみ、嫌悪など、入り組んだ人間感情の錯綜するなかで、この花は、そうした混乱に決して巻き込まれない清いすがたを私たちに提示し、神の国を指し示すものとなっています。

前へ

戻る

次へ