休憩室 2004/1
冬の星、カノープスなど
冬は寒くてゆっくり夜の星を観察するのにはふさわしい時ではないかもしれませんが、一年のうちで、最も美しい星々が数多く見られる季節です。オリオン座、大犬座、小犬座、双子座、雄牛座、御者座などにある一等星たちが、せまい範囲に集まっていて、私たちの心をはるかな大空へと引き上げてくれるばかりか、それらの神秘な輝きを与えた創造主へと呼び寄せられる気持ちになります。
今年の冬の空には、双子座のなかに、土星が見えるし、深夜ころには、東から恒星で最も明るいシリウスよりもさらに強い光で輝く木星が昇ってきます。というわけで、目で見えるものとしては、ほかの何ものよりも私たちの心を清め、引き上げるものである星が心にも刻まれるような季節です。
オリオン座のなかの一等星である、ベテルギウスという赤い星は、赤色巨星で、太陽の八百倍ほどもあるという大きさです。夜空に輝く星たちのうちでも、最も大きい星ではないかと言われているほどです。
また、私の住む徳島県小松島市では、天気がよく、北風の吹く夜には大気が澄み切っていて、南の空低いところに、シリウスに次いで明るい恒星として知られている、りゅうこつ座(*)のカノープスという一等星が見えます。このカノープスという星は、関東あたりでは、地平線近くになり、建物のかげになったり、大気の汚れのために、めったに見られない星で、それを見ることができたら長生きするとかいう言い伝えがあるほどで、老人星とか、寿星などという名前もあります。淡黄色で光度マイナス○・七等。
この星は、わが家からは割合よく見えて、中学生のころ、このカノープスという星を何とかしてみたいと思って、冬の星空の南の低い空を晴れているときはいつも探していたら、あるとき、南の低いところ、遠方の低い山なみのすぐ上に、明るい星を見つけ、これがもしかしたら、あの探していたカノープスかと胸をおどらせて星座で正確な位置を調べたところ、やはりそうであったので、とてもうれしく思ったのを覚えています。それ以来、冬の木枯らし吹く月のない夜にはおのずと、南の正面の空に輝くオリオンや、シリウスなどと共に、低い空のカノープスを探しています。今年ももう何度か目にとまったものです。
(*)龍骨とは、船底の中心線を船首から船尾まで貫通する、船の背骨にあたる材。