巻頭言
神よ、わたしの内に清い心を創造し、
新しく確かな霊を授けてください。
(詩編五一・12)
春 2006/2
わが家の梅の木もつぼみがふくらみ、ほのかな香りを漂わせて咲き始めている。寒さ厳しい日々が続いたので例年になく遅い開花である。しかし、その寒さを受け止め、花開いていく。他方、水仙は寒さ厳しいなかに次々と咲いていく。
キリストを信じる信仰もこうした「花」と似ている。苦しみ、悲しみあるいはさまざまの困難があっても、そのただなかに花を咲かせていく。主の御手による導きあれば、どのような厳しさのなかにあっても花は開き、厳しければそれだけいっそう強くキリストの香りを漂わせていく。
主イエスご自身、当時の支配者たちから憎まれ十字架刑にされた。血が流された十字架は、本来は目をそむけたくなるものであったはずであるが、後に喜びの花を思わせるものとなり、現在も世界中に罪の赦しという福音の香りを放ち続けているのである。
キリストが私たちに触れるとき、心に春が訪れる。何かが芽をふいてくるし、この世の闇のなかに射して来る暖かい光を感じるようになる。
岩の上に立てた家と砂の上の家
今年に入ってマスコミで大きく報道されたのは、情報時代の寵児としてもてはやされた堀江某という会社経営者が逮捕されたことであった。捜査の進展につれてその会社の経営陣がさまざまの不正をしていたことが明らかになった。
しかし、逮捕された人物には、自民党の幹事長や首相まで大いに肩入れしていたし、昨年の衆議院選挙では、出馬会見を党本部でさせたり、党をあげて応援した。竹中平蔵総務相もその時の応援演説で「郵政民営化、小さな政府づくりは小泉、ホリエモン、竹中の3人でスクラムを組んでやり遂げる」とまで言っていた。政治家たちの言うことがいかに信頼できないかの見本のようなものとなった。
ライブドアは、昨年十二月に日本経団連に入会したが、そのとき、経団連の奥田会長はその入会を歓迎していた。しかし、堀江逮捕を受けて、入会は「経団連としてミスした。」と述べ、間違った判断であったことを表明した。
奥田会長は、五十歳でトヨタ自動車の取締役となり、以後同社の社長、会長を歴任してきた日本企業の代表的人物の一人である。そのような人物が多く集まっているはずの経団連も大きな判断ミスをしたことで、政治家も経済界も日本を代表しているような人たちがそろって間違った判断をしていたことになる。
このようなことは今に始まったことではない。戦前でははるかに甚だしい過ちを犯していたことを思い起こさせる。つい六十数年前には、政治家も、軍人も、経済界、教育界、宗教界、文学などの芸術界も含め、あらゆる方面の指導的な人たちが日本の引き起こした戦争を聖戦と位置づけ、正義の戦いだ、アジア解放だなどと信じ込み、国民にもそのように指導していたのである。戦前の教育の内容も敗戦とともに一斉に崩れ落ちた。
いかに人間は誤りやすい存在であるかをこうしたことが明らかに示している。 人間の作った考えや組織、主張などは砂の上に立てた建物のごとくである。
これに比べて、聖書の真理はいかに強固であるか、戦争や災害、飢饉、伝染病の蔓延、科学技術の進展などなどいかなる社会状況の変質にもかかわらずにその真理は動かない。まさに岩の上に立てた家というべきである。
情報は今後ますます入り乱れ、今回の事件のようにまちがった情報によって人間の心は惑わされるであろう。それゆえに一層こうした情報の洪水時代において、いかなる波にもさらわれない不動の真理に心を寄せる必要がある。そしてそこにこそ、この世の荒波に呑み込まれない港があり、そこには死というすべてを呑み込む力にすら勝利する力が備えられているのである。