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天国の一瞥

 私たちが見たいと願うのはロンドンでもバリでもない、私たちは天国を見たいのである。
天国は容易に見ることのできるものではない、しかしこれが見えたときにはわれらの宇宙観と人生観とは一変する。
そのときには路傍の草までがわれらのために讃美歌を唱えるようになる。
そのときにはわれらの涙はすべて拭われる、われらの疑問はすべて解ける、
この世は直ちに楽園と化する、勇気は湧き出づる、恨みは消え失せる。
天国の一瞥は実に魔術者の杖である。これによりて複雑きわまりないこの宇宙も瞬間にして整然としたものと化する、
そうして私たちはこの汚れた地にあって、神に祈ってこの恩恵にあずかることができる。(「内村鑑三所感集」85頁)

・新約聖書において天国とは、マタイ福音書だけに現れる言葉で(他の福音書では「神の国」)口語訳での訳語。新共同訳では、天の国と訳され、本来はこの地上における神の御支配を意味するのであって、通常思われているように死後の世界を意味していない。この内村鑑三の文でも同様である。神が愛と真実をもって御支配されているのをはっきりと霊の目で見ることができたら、すべては変わってくると言われている。
主イエスは、幼な子のような心、自分を誇らず、自分がいかに何も持たないかを深く知った心、すなわち心の貧しい者、彼らに天の国が与えられると約束された。


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