聞く人に恵みが与えられるように、そ
の人を造りあげるのに役だつ言葉を必要に応じて語りなさい。
(エペソ4の29)
単純の美しさ
小さな谷川のほとり、岩から落ちる水の流れる音がする。それは一日中、それどころか何十年も何百年も変ることなく同じような単調な音であり続けてきただろう。
しかし、その変ることのない何も変化のないような音であっても、そこにたたずむとき心に清いものを注ぎ込んでくれる。単純さは不思議な力を持っているのである。ほかの手段では得られない心の清めを与える力を持っている。
神の創造されたままの自然は、しばしばそうした単純でありながら、美しさや力、清さを持っている。
ただ川に水が流れるという変化のないように見える単純な光景であるにもかかわらず、それは見る者にうるおいを与え続けるのである。
人間が造り出す複雑な美しさ、数々の照明、LEDを何万個を使ったものは、たしかにある種の美があると言える。
しかし、それは、夜空の星のたった一つが輝いているその神秘な美しさに到底及ばない。
ダンテの神曲、それは二度と生まれないといわれる歴史上最大のキリスト教の詩であるが、その地獄、煉獄、天国の三つから成る。それらの最後が、すべて星という言葉で終えているのも、その星の輝きの意味の深さ、霊的重要性をダンテも深く認識していたからであった。
星は最も単純な輝きである。しかし私たちの肉眼で見ることのできるものの内では、最も深遠な美を持っている。それを受け取るためには、静けさがいる。祈りがいる。
それは霊的な美しさであるゆえに、祈りの心をもって見ないとその美は深くは受け取れない。
聖書の真理も単純である。冒頭の、闇と混沌のただ中に、神が光あれ!と言われたら、光が存在するようになった、という単純な言葉は、そこにどれほどの広い内容と深い真理が込められていることだろう。
星の美しさが示しているとおり、闇のなかに光、それは、美ということの究極的な姿でもある。