詩集第十九集 神様の手のひら 貝出 久美子 二〇一七年八月一日 |
見よ、わたしはあなたを わたしの手のひらに刻みつける。 イザヤ四九・16 |
神様の手のひら
闇の底に沈んでいるように思えた 不安な夜 ふと響いてきた 「わが愛におれ」 という声 わたしがいるのは闇の底ではなく あたたかい 神様の手のひらの上だった
今朝も イエスさまに会えた それだけでいい
春にはカエル 夏はセミ 秋にコオロギ 朝 鳥の声 波も小川も風も歌う 神の音色 時にかなって美しい
天にまします …と空を見上げて祈る 天にまします 天にまします そうだ 主は今 おられる 天に そして いまここに
いつだって 後悔、失敗、反省だらけ 下を向く。 しかしそこから 十字架をみつめる 赦されたら 進んでいける。
ほとんど一年中 めだたない キンモクセイの木が 実は近くに こんなにあったんだと おどろく十月
「手が汚れたー」 と、べとべとの手を差し出してくる幼子 「服がぬれたー」 と、牛乳こぼして走ってくる幼子 言えば何とかしてくれると思っている 大人だって見習おう 汚れたらそのまま イエス様のもとに走っていけばいいんだ 汚れた心をそのまま差し出すとき 主イエスは 喜んできれいにしてくださる
わたしが わたしらしく わたしのいのちを生きるためには わたしが わたしの思いで わたしが決めて生きるのではなくて 聖霊がこころにあって 聖霊の言うままに生きる そのとき 一番わたしらしく わたしのいのちを生きることができる
暑い… 仕事が終わって 車から降りて 水筒のお茶を飲もうと 頭をあげると 飛び込んできた青い空 あ、秋だ。
二〇一七年二月の初め、 ふとしたことから腰痛が出てきました。 受診しても問題ないと言われたため、 仕事に孫の世話にと忙しく働いていました。 二月末に痛みが強くなったため MRI検査を受けると、 腰椎と胸椎の骨折と診断され、 固いコルセットが装着され、 その日から安静臥床と言われました。 二、三ヶ月の安静と言われ冬から春、 そして初夏になりました。 まさか!の出来事でしたが、 療養の中で詩も生まれました。 痛みが出て来た二月から書いた言葉を、 月日の流れにそって載せました。
痛みの意味を問う 主の沈黙が続く しかし 主は生きておられる そして わたしを見ている だから 主の沈黙に向かって わたしは 聴き続ける
腰が痛くて 仕事を休んで 一日中安静にしていたわたしは まるでダンゴムシ ふとんは落ち葉 くるまって ときどきちらりと空を見る まるまってころり 空はかわりなく青
きょう一日 つらい腰痛の中に キリストを思い 生かされていく
不調でも 見上げると 主イエスがいてくださるから うれしくなる 不調のまま
祈っても 祈っても 変わらない現実の中で 目を凝らし 目を凝らし 主の御旨を見つめる
二月二十四日 金曜日 腰の痛みが続く 心配ないと言われた整形に仕事の帰りに再度行く MRI … 「腰椎と胸椎折れてますね」 折れていたんだ 過ぎた日は帰らない わたしには失敗はあっても神さまには失敗はないから 「時にかなって美しい」という御言葉にすがる 家に帰り静まる 神さまに聴く 「万事が益となるように共に働く」 聖書が語りかける このことがあってよかった、と言える日が来る 必ず来る 先取りして 主に感謝を捧げる
背骨が折れていた 退職まで、もう少しだったけれど 安静のため休職 そのまま退職 あいさつもできないまま 長く働いたわたしの職場を去る 楽しかったことばかりが思い起こされ よき力に囲まれていたと 去りゆく職場を こころで抱きしめる
神さまに あふれるほどに与えられている 日の光のような日々のめぐみを 思うこともできないくらいに 忙しい日々だった。 立ち返り静まりなさい、と 神さまはわたしに安静臥床を強いられた。 おそらく 一番適切な神様の御配慮。 だから さあ寝たままで窓を開けよう 新しい ひかりの一日がきょうから始まる
上を向いて寝ているから 天井を見ていた 天井の木目を見ていた … そうだ この木目こそ 一年一年神様が描かれた線の重なり 神様の長い年月をかけての作品なのだと 気が付いてから その美しさにひきつけられる 天井
窓の外から ひとすじの陽の光がさして 天井にうつる かわいいひかりの子 朝の九時には天井の左端 十一時には天井の真ん中 午後一時天井の右端に行ってから するすると少しずつすべり落ちて 気がつくといなくなった またおいでね ひかりの子 天井で遊ぶ かわいいともだち
ともすれば 流されそうな心に 痛みが与えられる つらいのだけれど 痛みこそ 心のすべてを主に向かわせる 神さまの手綱
春雷を 安静臥床で
ひとり聴く
朝、開ける扉はふたつ 体が目覚めて陽がさして 窓を開けたらひとつめの目覚め そのむこうに もうひとつ神の国の扉 開けなければ閉まったままで 一日はあっけなく過ぎていく しかし この扉が開かれて初めて差し込む 本当の光
息つく間もなく忙しかった日も 安静を強いられている今も 抱えている困った問題も 神さまが 手入れをされているのだ いつか豊かに 実を結ぶために
「実を結ぶものはみな いよいよ豊かに実を結ぶように 手入れをなさる」 (ヨハネ十五・2)
「してもらいたいように 人にもしなさい」 と、キリストは言われた。 してもらいたいことが どういうことなのか 安静臥床を強いられて ただいま、実習中 この不便さが きっと誰かの役に立つ
痛みが消えると 祈りを忘れてあれこれ思案 痛くなるといそいで 主よ!と祈る おちつけ おちつけ 癒しの御手を信じてゆだねて 少しおちつけ
天井の木目に向かって 寝たままで祈る 憐れんでください 憐れんでください 見えない御手 天井より降ろされ わたしにつながっていなさいと 差し伸べられる 喜びの朝
ベッドに寝ている じっと寝ている 左側は障子 こどもが破った跡がある 三角に破られた障子の穴から 空が見える 三角の空を 雲がゆっくりと流れていく
寝たままで スカイプ中継の主日礼拝に参加した 場所はちがっても 共に静まり共に祈る 造られた者が 造り主の前に静まる 神を拝し 神を喜び 神に愛され 神を愛する そのために人は造られたのだと 心に知らされる 主の日の礼拝 寝たまま感謝に包まれる
スカイプで 主日礼拝に参加した 礼拝 ここにいのちがある 共に集まるとき ひとつの主の体となる 体にいのちが宿り 鼓動が聞こえ始める そして 離れて御言葉を聞くわたしにも 脈々といのちが 流れてくる
思えば 立ち止まることも 静まることも ゆっくりと 考えることもなく 追われていた日々 今、静かに 青い空を見る 風に吹かれる 白い雲を見る 十字架の上から お前を赦す と言ってくださる 主を思う
痛みがおさまれば 治ったように思い 痛くなると じたばたと主の名を呼んで 助けてと祈る 自分勝手なわたしの信仰 しかし おさなごは 指の先をケガしても いたい、いたい、と走ってくる 主はきっと赦してくださる
深い夜の底に ひとり横たわる 夜という船の底に ひとりで沈んでいる このまま わたしひとり 沈み続けていても 桜前線は 日本をのぼっていく
窓から 何本もの電線が見える 毎日 空と電線を見る 電線は五線のように空に広がり 鳥がとまる 五線に鳥の音符がおかれている 風がそれを弾いていく (三月までの詩)
骨折して安静にしている 不便だけれど 主は憐み 与えられる恵みは いたれり つくせり
障子の隙間から 陽が差しこむ 天井に光が差し 少しずつ動いていく 神さまが 地球を回している 神さまは愛 だから 地球は愛で回っている
悲しむ友に手紙を書く 主よ、聖霊の郵便で届けてください 苦しみの友にメールをする 主よ、聖霊の電波で届けてください 病める友に電話をする 主よ、聖霊が語ってください 主よ どうか ただあなたが働いてください
どうにもならない過去を苦しみ 起こっていない未来を不安がる どこからくるのか こころを闇に閉ざす雲 闇を砕くのはただ キリスト 十字架で勝利されたこの方に 祈り求める 必ず雲は消え こころに再びさす光
不安がいっぱい 心配だらけ それでいい 不安は祈りの道となり 祈りに神の力が働く 不安になるたび 祈り続けよ そこに新たな御業がなされ すべては感謝に変えられる
イエスが道 こころにあれば 歩いて行ける イエスが真理 こころにあれば 正しくされる イエスがいのち こころにあれば 生かされていく
おそれを感謝する 不安を感謝する できない 感謝できないけれど 感謝できないわたしの弱さを そのままでいいと 憐れんでくださる その方に感謝する そのことを感謝する
どうしてこの苦しみが あなたに課せられたのか 花は咲き 風も美しいこのときに そして わたしは友のために何もできない 全能者よ その手には救う力がある 助けてください わたしは両手でこぶしを作り 主の約束の扉を 叩き続ける
心が暗くなる夜 そっと窓を開ける 月の光が差し込む 柿の木がゆれる あなたの味方だよと 柿の木がいう 風も月もいう 安心して眠る
空を見上げて祈る 風が雲を運ぶ 雲に友の名を置く 流れる雲に ひとつずつ 友の名を置く 風が雲を天に運ぶ
療養中にいろいろな 替え歌賛美が生まれました。
①夕べにつどえば (「仰げば尊し」のメロディ) *これは、浜松聖書集会会誌「みぎわ」に 投稿した詩を夕拝用に一部変更したものです。
②主の祈り (「琵琶湖周航の歌」のメロディ または「荒城の月」のメロディ)
③道に迷う わたしに 「ふるさと」のメロディ
④こころの痛みを 「ほたるのひかり」のメロディ
⑤イエス様トントン 「こぎつね」のメロディ (♪こぎつねコンコン山の中)
⑥いつでもいっしょに 「うさぎとかめ」のメロディ (♪もしもしカメよカメさんよ)
⑦いつでもどこでもイエス様と 「雨ふり」のメロディ (♪雨、雨ふれふれ、母さんが)
⑧主イエスに話そう 「きらきら星」のメロディ
夕べにつどえば 「仰げば尊し」
1.夕べにつどえば 風はそよぎ したしく語らう 主のみもとに 痛みも重荷も にないあえば こころはひとつに 主の平和よ
2.夕べに祈れば 御声清く こころにあふれる 主のみめぐみ よろこびかなしみ わかちあえば こころはひとつに 主のやすらぎ
3.夕べに静まり 共に祈る 感謝と讃美を うたう今宵 こころの重荷を 主にゆだねて 今、目をあげれば 主の十字架
主の祈り 「琵琶湖周航の歌」または「荒城の月」
1.天におられる わが父よ 主の御名こそが 聖とされ 神の御国を 待ち望む 主のみこころを 地の上に
2.われらに罪を 犯す者 赦せる心 与えられ われらの深い この罪を お赦し下さい わが父よ
3.日ごとの糧を きょうもまた 与えて下さい 地の上に 貧しき者も 病む者も 心と体 生かすため
4.御国と力 栄光は 全てあなたの もとにあり こころ一つに 仰ぎ見る 主の栄光は とこしえに
道に迷う わたしに 「ふるさと」
1.道に迷う わたしに 救いの手を さしのべ 罪と弱さ あるがままに 赦したもう 主イエスよ
2.いつくしみの み声が しばし胸に 聞こえず 思い悩む 闇のよるも みつめたもう 主イエスよ
3.この弱さも 痛みも すべて知りて あわれむ めぐみ深い 愛とゆるし ともにいます わが主よ
こころの痛みを 「ほたるのひかり」
1.こころの痛みを このなげきを ただ主にさけびて 祈り求む わが主はあわれみ 御手をのべて いのちと救いを 与えたもう
2.おそれと弱さで 胸は曇り 行く手のひかりが 消えるときも わが主はあわれみ 御手をのべて いのちの光を 与えたもう
3.愛するわが主よ いのちの主よ すべての望みは ただ主にあり 力の限りに われはうたわん 輝く十字架 わが救いと
イエス様トントン 「こぎつね」
1.イエス様トントン 戸を叩く 戸を叩く こころの扉を開いてごらん 主イエスの風が 吹いてくる
2.わたしもトントン 戸を叩く 戸を叩く イエス様こころに今来てください 主イエスのひかりが 灯ります
いつでもいっしょに 「うさぎとかめ」
1.いつでも いっしょにイエス様と お話ししながら 歩きましょ イエス様 あのね それからね イエス様わらって 聞いている
2.どんなにきょうが つらくても イエス様 いつもそばにいる 誰も 知らない かなしみも イエス様だけが 知っている
3.これから何が あったって イエス様信じて あるきましょ どんなに暗い細道も イエス様 けっして 離れない
いつでもどこでもイエス様と 「雨ふり」
1.いつでも どこでも イエス様と 一緒に歌おう うれしいな ハレルヤ ハレルヤ ランランラン
2.あいたた ころんだ つまずいた イエス様 やさしく そばにいる いちにの さんしで ランランラン
ハレルヤ ハレルヤ ランランラン
主イエスに話そう 「きらきら星」 1.主イエスに話そう 何でも話そう 大きなことも 小さなことも 主イエスに話そう いつでも話そう
2.主イエスに歌おう 元気に歌おう うれしいときも かなしいときも 主イエスに歌おう いつでも歌おう
3.主イエスと歩こう 一緒に歩こう でこぼこ道も なだらか道も 主イエスと歩こう 一緒に歩こう … 替え歌讃美を終ります…
二月二十四日に「骨折」と言われた その整形外科に何度も通院した 七月十二日水曜日午後二時にMRIを撮った 「だいたい治っている。もう、これで、診察にこんでもいいでよ」 えっ! … 神様! ありがとうございました。 新しい一歩を踏み出すような気持ち きょうは記念の日
朝起きて お祈りをして 服を着替えて一階に下りる 日常がはじまる 四ヶ月ぶり 当たり前の毎日は 実は 特別な神の恵みであったのだと 主を仰ぐ 七月
安静を強いられて寝ていた部屋の片隅 天井を見て過ごす夜 家という舟の底にひとり沈んでいる 何かを焦る夜 黙してただ主を待ち望む
「わが愛におれ わが愛におれ」 胸に静かにひびく声 わたしが横たわっていたのは 限りなく大きな神さまの手のひらの中だった あたたかいその手のひらには 深い釘の跡がある
詩集が十九集めとなりました。 今回は、骨折という思いがけない出来事が与えられましたが すべて 神様の手のひらのうえにあることを知らされ 感謝でした。 詩集を手にしてくださり、ありがとうございます。 皆さまの上に 神様の祝福がゆたかにありますように。 |