平和への道を妨げる動きー武器輸出解禁の動きー 2004-11
首相の私的諮問機関である「安全保障と防衛力に関する懇談会」は十月四日、武器輸出の一部解禁を含む報告書を発表した。
武器輸出三原則とは、次の内容を指している。
(1)共産圏向けの場合、(2)国連決議により武器などの輸出が禁止されている国向けの場合、(3)国連紛争当事国またはそのおそれのある国向けの場合。
このような場合には、武器を輸出しないというものである。
その後、一九七六年になって三木武夫首相が、対象地域以外への武器輸出も「慎む」、かつ、武器製造関連設備も武器に準じて扱うなど、より厳しい規制を設けたことで、三原則以外の国にも武器を輸出することは慎むということになり、事実上一切の武器輸出が禁じられたことになった。
そのような三木内閣の政府統一見解は、「平和国家としての我が国の立場から、それによって国際紛争等を助長することを回避するため」、「憲法の精神にのっとり」、武器輸出を慎む方針を明らかにしていた。
一九八一年には衆参両院本会議が、政府に武器輸出3原則のための実効ある措置をとるよう求める決議を全会一致で可決したが、一九八三年、中曽根康弘内閣になってから、アメリカに対してだけは日米同盟上この三原則を緩め、武器技術に限って供与する途を開いた。
そして最近では、財界(*)からも自民党からも、この三原則をなくそうという動きが次第に強くなっていた。
(*)財界の代表的な団体、日本経団連の会長は自動車産業で世界第二位のトヨタの会長であり、副会長は、日本のトップ財閥三菱グループの中心企業で日本の軍需産業のトップでもある三菱重工業の会長である。なお、日本の軍需産業は、九九年の契約額上位から順にあげると、三菱重工業、川崎重工、三菱電機、東芝、石川島播磨重工、日本電気、日立造船、日産自動車などとなる。軍需産業は、発注者が国であるから、安定している上に、不況のあおりを受けにくいということで、企業としては経営上有利となることから、これらの会社が利益を重視するために関わりを深めていこうとしている。
今回の報告書はこれを更にゆるやかにするものであるが、最終的にはこれらの三原則を排除してしまおうとする意図が感じられるものである。そして企業が軍事産業にさらにいっそう関わり、利潤をさらに多くあげようとしたいのであり、政府やアメリカも日本の軍事産業が増大し、日本の武器輸出が自由にできるようになった方がさらに日米の軍事的な同盟を強固にするためには、利益があるとみなして、このような武器輸出三原則を緩和する方向へ向かおうとしているのである。
これは、平和憲法をもって、世界の平和にどの国よりも貢献しようという旗印をもっている日本が、武器を輸入したい紛争当事者の国にも輸出することに道を開くものである。こんなことになれば、平和主義という最も世界で貴重な原則をもってそこに世界で、独自の地位を占めて活動すべきなのに、他方で、武力を用い、戦争で相手国を破壊しようとする人たちにその武器を売って利益を得ようとするなど、日本の正しい進路を誤らせるものである。
財界は、こうした軍事産業を増大させるために、武器輸出三原則をなくそうとしているが、その三原則を生み出した元に、平和憲法があるため、財界は平和憲法を変えてしまおうという意見が強くなっている。
このようなさまざまの方向から、平和憲法をなくしてしまおうという動きが見られる。しかしこうした動きは、世界全体の平和や、人間の過去の武器を使った大きな罪、あるいは、実際に用いられた武器によってどれほどの弱い立場のアジア、アフリカあるいは中南米の人たちが苦しめられてきたかについて、全く見つめようとはしていない。
私たちは、武器を取らない国という真理を維持するためにも、このような間違った動きに注目し、真の平和の道を見失ってはいけないと思う。