リストボタン虚偽と真実    2007/2

有名なテレビの健康番組で、一〇年ほども前から内容を捏造していたのが発覚して、大きな問題となっている。納豆をたくさん食べたらやせるなど、捏造したデータを用いたり、そんなことを言ってもないのに、あたかもアメリカの学者がそう言ったように虚偽の放送をしていたというのである。
しかもこうしたことが、長年繰り返されていたのではないかと考えられている。
健康番組全体が疑いの目で見られるようになったとか、政治家が放送内容にたち入ってく危険性を招くようになったとか、いろいろ他の問題にも波及していく様相を呈している。
少し前には、ホテルなどで、耐震強度偽装が行なわれていたことが報道され、また、原発においては、東京電力柏崎刈羽原発で法定検査を通過するための偽装が発覚した問題、また、創業して百年にもなろうとしている有名菓子企業である不二家の期限切れ牛乳を使用していた問題、大会社が談合をやらない、といったその直後から談合をやっていたこと、また、教育関係のタウンミーティングでのやらせ問題等々、さまざまの分野での虚偽が繰り返し報道されている。
こうした国内問題だけでなく、イラク戦争も、大量破壊兵器をイラクが所有しているとして始められたが、実はそういうものは存在しなかったことが明らかになった。そのような虚偽を事実だと信じこんで、戦争を支持したアメリカ国民も、それに安易に追随した日本の小泉前首相やその閣僚たちも、根拠のないこと、単なる類推でしかないことを公然と事実だと思い込んだのであり、虚偽を真実として宣伝したことになった。
このような虚偽は、今に始まったことではない。いつの時代にも広く見られた。
主イエスも最も神を敬い、神とともに歩んだにもかかわらず、神を冒涜したとして、虚偽の罪で捕らえられ、処刑されたし、ローマ帝国のキリスト教徒たちはやはりローマに火をつけたという虚偽の罪名によって捕らえられ、大競技場でライオンと格闘させられるという恐るべき刑罰を受けることになった。日本のキリシタンも同様で数々の偽りの汚名を着せられて逮捕、拷問され処刑されていった。
今から七〇年余り前のヨーロッパでも大規模な虚偽が世界に戦争という火をつけることにまで進んでいった。
ヒトラーの支配は急激に拡大し、一九三三年一月、ナチスが政権を獲得し、一党独裁を目指し、他の党を弾圧し始めた。その年の二月の夜、国会議事堂が炎上した。そして共産党が火をつけたとして弾圧された。しかし、実際はヒトラーの陰謀であったと考えられている。このような公然たる虚偽を重ねて一党独裁となり、ドイツ軍のポーランド進撃によって第二次世界大戦は始まった。
そして戦前の日本はやはり侵略戦争を、聖戦と偽って国民をも動員し、その結果数千万のアジアの人たちが犠牲となったおそるべき悲劇をもたらすことになった。そして開戦後わずか半年ほどでミッドウェー海戦で日本海軍は航空母艦4隻を失う大敗したにもかかわらず、国民には勝利と偽って報道させ、その後もずっと虚偽を報道し続けていった。
このように、現在から過去のの出来事を少しみてもそこには偽りが全体を包んでいるのがわかる。そして単にその偽りは個人的な問題や会社の問題にとどまらず、国家全体から世界の大戦争にまでつながっていくのである。
虚偽はまさに滅びへと通じているのがわかる。
このような現実に接して、私たちはどこにも真実はないのだ、とあきらめにも似た気持ちになることが多い。
しかし、神はこうした現実のただなかにいかなる虚偽にも動かされない岩のごとき真実を私たちの前に備えられた。神ご自身がその真実そのものなのである。 このことは、すでに旧約聖書によって数千年も昔から、はっきりと記されている。

憐れみ深く恵みに富む神、忍耐強く、慈しみと真実(まこと)に満ち、
幾千代にも及ぶ慈しみを守り、罪と背きと過ちを赦す。(出エジプト記三四・67

神とは、慈しみと真実をその本質としておられる。その神が、目に見える姿をとって現れたのが主イエスであった。現代の私たちは主イエスを信じ、見つめることによって、究極的を真実を知って交わることが与えられているのである。
多くの人は、虚偽が至るところにあるから、神などいないという。しかし、神は数千年も昔からそのような偽りのただ中で神の真実を実感する人たちをも創り出してきたのである。
星の光は夜の闇にあっていっそうはっきりと見える。それと同じように、この世の虚偽のなかにあって、神の真実はいっそう鮮やかに感じるように造られている。
このような偽りの満ちた世にあって、もし私たちが神の真実という光輝くものがなければ、その暗夜のゆえに道に迷い、ついに深い闇に落ち込んでいったことであろう。
聖書は一貫して、神の真実を語り続けている。聖書という扉を開いて中に入るとき、至るところで神の不変の真実が静かに光っているのを見ることができる。


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