予期しないこと 2007/7-8
七月には日本中でほとんどだれも予想しなかったであろう事が次々と生じた。
それは、新潟県柏崎地方を中心とする大きい地震であり、その地震による原子力発電所の多数の故障(トラブル)であり、また自民党の参議院選挙での歴史的大敗である。
一つは自然の現象であり、二つ目は、科学技術の問題であり、また三つ目は政治の問題である。
新潟県では二〇〇四年一〇月二三日に、県のほぼ中央に位置する小千谷市を震源として地震が発生した。それから三年も経たないうちに、直線距離では二〇キロほどしか離れていない柏崎市で今回のような大きな被害を生み出す地震が生じようとはだれも予想してはいなかっただろう。
また、七月最後の日曜日に行われた参議院選挙で、参院自民党ナンバー2の片山虎之助参院幹事長が民主党の姫井由美子氏に破れ、島根県では青木自民党参院議員会長の地元にもかかわらず、自民党の前職が国民新党の候補に破れるなど、自民党が歴史的大敗となることも、政治の専門家、何十年も政治家として生きてきたベテランの政治家でも、誰一人こんな予想をした人はなかったであろう。
この世界は常にこのような、予測しがたいことが次々と生じる。
それゆえに、人間は不安になるという人もいるだろう。しかし、それゆえに安心も生じるのである。それは、いかに暗い雲がたちこめるようなことが続いても、また誰もが未来に望みをもてなくなった時にあっても、神はそうしたあらゆる人間の予想を超えたことを起こされるのを信じることができるからである。
キリスト教伝道の歴史においても、最も強力な伝道は使徒パウロによって行われた。しかし、彼はいかなる当時のキリスト者も、またユダヤ人たちも予想できなかった変身を遂げた人物であったのだ。ユダヤ教の優れた教師に指導されたパウロはキリスト教を邪教として打ち倒さねばならないと確信してキリスト教徒たちを迫害していった。
しかし、そのパウロに突然神の光がのぞんで彼はそれまでのいっさいを捨てて、キリストの方に向き直った。そしてキリストの福音に残る生涯を命をかけて尽くすことになった。
十字架という最悪の、そして最も悲劇的な出来事から、二千年をも貫いて最も大いなる出来事が生じるとは当時のだれが予想できただろうか。神はこうした万事休すと見えることからも、大いなる光を生み出すことができるのである。
このことは、聖書のはじめから明確に記されている。世界の創造の最初は完全な闇と混沌であって無限の深い淵があるばかりであった。それは私たちの人間の歩みで言えば、途方もない絶望的状態である。それはどこにもよいことを期待できない状況であった。
しかし、無から有を生じさせる神、そのゆえにいかに人間の考えで道がなくとも、八方塞がりであっても、神はそこにいかなる人間も予期できない道を開き、新たな光を投じることができるのである。