福島第一原発4号機の危険性と「祈ること」
日本は現在、地震が多く発生するようになっている。福島にも大きな余震がある可能性があり、その場合には、大事故を起こした原発は、さらなる困難に直面する。場合によっては、現在までの状況よりはるかに重大なことすら生じる可能性をはらんでいる。
そのようなことをいつも私たちは考えておかねばならない。去年の原発大事故は、まさにそのような重大な事故など起こらない、大地震が来ても絶対安全であるように幾重にも安全装置が装備されている、という御用学者たちの宣伝を信じてしまったところにその原因があった。
そうした大変な事態が生じるということを本当に知っているほど、原発を造ってはいけないのだ、という考えにおのずとなっていくであろう。
2月18日(土)に、京都大学原子炉実験所の小出裕章氏が徳島市で講演をされた。そのなかで、福島原発4号機に関する危険性を次のように語っていた。
…政府によれば、2号機こそは、最大の破壊を受けていて、放射能を環境に放出した最大の原因となっていると言われてきた。
そして、3号機は写真で見てもわかるが、建屋の骨組みすらないほどに破壊されている。
それと比べると、4号機は骨組みは残っている。それなら、 3号機と4号機とどちらが破壊が深刻なのかといえば、3号機と思われるかも知れない。
しかし、そうではなく、4号機なのだ。
3号機は原子炉建屋の最上階の2階の部分が吹き飛んだが、その下はまだ壁がある。
それにくらべると4号機は骨組みは残っている。しかし、4号機は最上階の二階の部分も、その下の部分も壁がなく、その下も穴があいている。3号機も4号機も最上階の2階の部分は体育館のような巨大な空間である。オペレーションフロワと言われる、 クレーンや燃料取り替え装置がある巨大な空間だ。そこで水素が出て爆発した。
4号機はそこも壊れ、その下も壊れている。使用済み燃料プールに膨大な燃料を入れてある。そこも何らかの破壊があった。そして生じた水素が最上階の二階に相当するオペレーションフロワを吹き飛ばした。
ほかの1号機から3号機までは、破損したとはいえ、なんとか容器は残っているから燃料、廃棄物は大体はその容器にの中にある。
しかし、4号機の使用済み燃料プールの冷却に本当に失敗するなら、そこからは、なんの防壁のないまま放射能が環境に大量に出て来る。
4号機が大きな余震によって、崩れ落ちる可能性がかなりあり、危険であったから、耐震補強工事して何とか崩れ落ちないようにしたという。しかし、猛烈な放射能で汚染されているから人間は近づくこともできない。
東京電力は補強工事をしたというが遠隔操作か何かでやったのかも知れないが、そういう強い放射能汚染の場所で本当に補強できたのかと思う。
もし、大きい余震があって、この使用済み燃料プールが崩壊でもしたら、もうなすすべはない。もう天に祈ることしかできない。
このプールが崩壊するような大きな余震がこないでくれよと、それを願うしかないのが今の状態だ。この4号炉のなかには、広島原爆がばらまいた放射能生成物の約四千発分もある。…
----------------
このように、4号機の重大な危険性を排除する方法がなくて、巨大地震が起こらないでくれと、祈るだけしかないという。原子炉に関する現役の科学者、40年もの間その方面の研究を専門的にやってきた学者が、「ただ祈るしかない」というほどに、今回の原発の事故は、将来の廃棄物の処理の難問や除染、復興といった以前に、現在も深刻な状況を抱えているのであり、恐ろしい爆弾を抱えているような状況なのである。
このことに関しては、アメリカの原子力技術者、A・ガンダーセン(*)が次のように述べている。
(*)1949年生まれ。原子力の技術者。アメリカで原子炉の設計、建設、運用、廃炉などに関わり、アメリカエネルギー省の廃炉手引き書の共著者。妻と共に設立した組織で原子力発電に関する調査分析や、訴訟、公聴会における専門家として意見の提供をしている。
…三号機の爆発はたしかに凄絶であったが、一番の懸念材料は4号機であり続けてきた。アメリカの原子力規制委員会 (Nuclear Regulatory CommissionーNRC)が、当時の日本政府の勧告より広い80キロまでの避難を提言した理由でもありました。NRCは、使用済み燃料プールが乾いてしまって、発火することを非常に心配していた。あまりにも熱くなって金属が燃える現象だ。
水では消化できない。そのような状態になると、水をかければ事態は悪化する。水から発生した酸素がジルコニウムを酸化させるうえに、水素が発生して爆発する。
こうなると最悪の事態だ。10〜15年分の核燃料が大気中で燃えるという世にも恐ろしい状況となる。 4号機の建屋は構造が弱体化し、傾いている。事故後、東京電力は作業員の健康をリスクにさらしながら、プールを補強した。それだけ損傷が激しかったのである。
大きな地震に襲われたときに倒壊する可能性が、4つのなかでは最も高いといえる。
耐震性を高めるために打つ手はあまりない。
再び、震度7の巨大地震が来ないことを祈るだけだ。
このような事態は、科学にとって未知の世界である。取り出してまもない完全に近い炉心が入った使用済み核燃料プールでおきる火災を消し止める方法など、だれも研究すらしたことがないのである。 事実上燃えるがままにまかせるしかないとすれば、それは解決策などとはいえない。
大気圏内で行われた歴代の核実験で放出された量を併せたほどの放射線セシウムが、4号機のプールには眠っている。4号機の使用済み燃料は、今でも日本列島を分断する力を秘めている。…(「福島第一原発―真相と展望」70〜78頁 集英社新書)
このように、小出裕章氏も、ガンダーセンもいずれもが、4号機に巨大地震が襲うことになれば、その大量の放射能によって日本全体にとって―否世界にとっても現在よりはるかに重大な事態となることを指摘し、そのようなことを確実に防ぐ方法がないために、「祈る」だけだと言っているのに驚かされる。
さらに、この4号機を含め、3〜4年ほどして、燃料集合体が大気中で保管できるようになったら、核燃料を取り出さねばならない。これは、至難のわざであるが、そうしないと再び地震や津波の襲来のときには、大変な事態となるからである。
しかし、その取り出しがまた極めて困難だという。4号機の建物自体が傾いているうえに、4号機では、上部のクレーンも破壊された。 その状況で、危険な高い放射能を持つ燃料を持ち上げて、直径3m、厚さ7・5センチもある鋼鉄製の容器(キャスク)に入れて運ばねばならないが、それは100トンにも及ぶ重量となるから、それを操作するときにもし落下でも起こすと、燃料がたくさん入ったプールの底が抜け、東京を壊滅させる火災を引き起こす可能性があるという。それは、そのような事態になるとおびただしい放射能が放出されてしまうからである。
さきに、もし、4号機の燃料プールが地震で崩壊したなら、世にも恐ろしい火災となるといったのと同様のことである。このような事態となれば、消すことはできず、莫大な放射能が、首都圏に降り注ぐゆえに壊滅させると言っているのである。東京地域がそのようになるなら、ほかの地域も当然たいへんな状況となるのは容易に想像できる。
最悪の場合には、このような事態まで生み出す、原発というもの、このような本質を知らないゆえに、そして金や自分の地位に執着するものたちがたくさんいるからまだ再稼働させようとする人たちが多いのである。
こうした事態をはらんでいる原発が何故収束したなどといえるのか、大いなる偽りでしかない。
私たちは、電気―エネルギーをできるだけ無駄使いをしない、という生活へと転向し、まず贅沢に電気エネルギーをいくらでも使うということでなく、まず安全、安心を生み出すような生活のあり方へと進んでいかねばならないと思う。
ささやかなもので満足する、その根本的な道は、はるか2500年以上も昔に言われている。
「主はわが牧者、わたしには乏しきことがない。」(詩篇23篇)という道である。