ことば
(212)信仰とは、神へ向ってひたすら努力することではなく、神に己れをゆだねることである。…そうすれば、万事が順を追うてまったくひとりでに行われる。まず、青々とした畑、つぎに、実りを約束する穂、やがて、実った見事な穀物、そして生涯を無駄でなく、立派に過ごしたあとで、最後に安息のための収穫。「神を愛する者たちには、すべてのことが益となる。」(*)(ローマ人への手紙八・28)。
このことを信じる人にとっては、普通の意味での「幸福」や「不幸」の観念は、もはや存在しない。(ヒルティ著眠られぬ夜のために上七月一五日の項)
○確かに、もし私たちがすべてのこと、―病気や家族の不和や死別、事故、職業上の困難などいろいろのことをも、私たちが神の愛と万能を固く信じ続けるかぎり、すべては益と変えられていくと信じることができるなら、神はそうした信仰を祝福し、実際にそのようにして下さる。これこそ、道のないところに新しい道を開き、水のない荒れ地に水をあふれさせて下さることである。
(213)ハイジはクララに問いかけた。
「星はどうしてあんなに輝いて私たちを見下ろしているのか知っている?」
「知らないわ。どうして?」
「それはね、お星さまは天国に住んでいて、神さまは何でも私たちのためによくして下さることを知ってるからよ。こわがったり、苦しんだりしないで、何でも最後にはよくなるのだって信じて、喜んでいなさいと、言っているのよ。
だから私たちは神さまにすっかりお任せして、いつまでも心にかけて下さるようにお祈りすればいいのよ。」
(ヨハンナ・スピリ著
「アルプスの少女ハイジ」角川文庫 二四二頁)
Why do you think the stars twinkle so brightly at us? asked Heidi.
"I don't know.Tell me" Clara replied.
"Because they are up in Heaven and know that God looks after us all on
earth so that we oughtn't really ever to be afraid,because
everything is bound to come right in the end.That's
why they nod to us and twinkle like that. Let's say our prayers now Clara,and ask God to take care of us."
○「ハイジ」の物語は、アニメになってテレビでも広く親しまれてきた。私はそのアニメはわずかしか見てはいないが、愛らしい登場人物と美しい山の風景によって心のなごむ内容であったように思う。しかし、その子ども向けのアニメでは、この物語の中に深く流れている神への信仰がほとんど削除されている。
著者のスピリは、牧師の娘で、ハイジの物語を原作の訳で読むと、著者が何とかしてこの本を読む人たちにキリスト信仰を伝えたい、という情熱と、アルプスの自然への深い愛が伝わってくる。
ここに引用した箇所も、上の「ことば(212)」の(*)の聖句(信じる者にはすべてが益となる)をわかりやすく言ったものである。
なお、著者の墓には、次の聖句が刻まれているという。
主よ、われ今なにをか待たん。
わが望みはなんじにあり。(詩編三九・8)
So now, Lord, what am I to hope for? My hope is in you.
星や山々、草木など自然のさまざまのものは神が創造されたものであり、そこには神の私たちへの愛、その万能の力や美などさまざまのものが刻まれている。
著者が、ハイジに託して述べているのは、神と心がひとつに結ばれるほど、周囲の自然の世界からも、私たちへの神からの生きたメッセージが実感されるということであり、自然を通し、そして神の言葉を用いて、読者に語りかけているのである。
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